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ベルナデットを救ったあと、彼女はX3のコクピットに入ってもらい、大急ぎでX3を走らせていた。
「トビア、これからどうするの?」
「クロスボーン・バンガードと合流する!」
今、かれらは連邦と木星軍、ふたつの軍の攻撃を受けているんだ。
このX3ならかれらの手助けに十分なる。 だから、少しでも早くいかないと……。
「あっ……」
ようやく戦闘区域にやってきた瞬間、脳に電流が走った。
混戦の中、無意識に全神経をひとつのMSに集中させた。
あの感覚……間違いない。
「スイさん!」
マザー・バンガード近くで戦っているバタラ。あれにスイさんが乗っている。
確認しなくてもわかる。直感でも、確実はだった。
「あのMS、動きがよたついてるわ」
「あのままじゃあすぐに撃墜されちまう! もっと機敏に動かないと」
ぼくはX3を加速させた。
くそ、あっちへの距離が思ったより長い。 その上、乱戦の中だ。どうしてもまっすぐ進めない!
だあああっ、なんか来た!
「くっそっ! どけぇっ! どけってんだろーっ!」
減速することなく、そのまま立ちふさがったMSを一刀両断した。
よく見てなかったけど味方じゃないことは確かだ。ごめん!
「あっ?」
彼女の背後! F91が照準を合わせている。でも、スイさんは気づく様子がない。
(ダメだ!!!)
ぼくは無意識のうちにビームザンバーを投げていた。剣は見事敵にクリーンヒットしたが、破壊まではいかない。でもスイさんは背後にいる敵に気づいて止めを刺した。
「スイさん! スイさんですよね!? ぼくです、トビアです!」
「トビアくん!?」
剣を拾ってバタラと背中合わせになる。
よかった、バタラとカメラが繋がった。
でも、カメラに移ったスイさんはかなり疲労していた。そりゃそうだ、馴れない戦闘をやっているんだから。特にこんな乱戦。
「聞いて、マザーバンガードにはもう戻れないわ! さっきベラ艦長が……」
「わかってます。ぼくらは早く脱出ポッドに入らないと」
そのとき、だった。後ろで何かが光った。とてつもない光だ。そう、あの加減はたしか、ビームライフルやヴェスパーの……。
「きゃあああ!??」
「スイさん!」
カメラごしに、スイさんの悲鳴を聞いてはっとした。あわてて後ろを向くと、さっきまでピンピンしていたのに、今はもうボロボロになっているMSが。
流れ弾を受けたらしい。バタラの右半分がなくなっていた。
ダメだ、胸部まで焼かれてる。
「スイさん!バタラは爆発する、早くこっちに!」
スイさんもそう感じたらしい。ぼくが叫ぶ前にコクピットを開いていた。
ぼくは急いでスイさんを中に入れると、その場を離れた。爆発に巻き込まれちゃたまんない。
後方で何かが一際でかく光った。バタラが壊れたのだろう。
「……あ!」
ちょうどそのとき、ベラ艦長のコアファイターが近くまで投げ飛ばされてきた。ぼくはとっさにそれを受け止める。
「艦長! なにやってるんですか! 丸腰でこんなこと……」
「シーブック! シーブックが! シーブック!!」
「え?」
シーブック?
「シーブック! いやあああああっ!」
こんな取り乱してるベラ艦長始めてみた。
……まさか!
ぼくは無意識に前を見た。
黒いガンダム……X2が、背を向けて飛んでいってる。
そして、ボロボロの状態で地球に自由落下しているX1の姿も。
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