背伸び | ナノ


▼ 21


ベルナデットを救ったあと、彼女はX3のコクピットに入ってもらい、大急ぎでX3を走らせていた。


「トビア、これからどうするの?」

「クロスボーン・バンガードと合流する!」


今、かれらは連邦と木星軍、ふたつの軍の攻撃を受けているんだ。

このX3ならかれらの手助けに十分なる。 だから、少しでも早くいかないと……。


「あっ……」


ようやく戦闘区域にやってきた瞬間、脳に電流が走った。

混戦の中、無意識に全神経をひとつのMSに集中させた。

あの感覚……間違いない。


「スイさん!」


マザー・バンガード近くで戦っているバタラ。あれにスイさんが乗っている。

確認しなくてもわかる。直感でも、確実はだった。


「あのMS、動きがよたついてるわ」

「あのままじゃあすぐに撃墜されちまう! もっと機敏に動かないと」


ぼくはX3を加速させた。

くそ、あっちへの距離が思ったより長い。 その上、乱戦の中だ。どうしてもまっすぐ進めない!

だあああっ、なんか来た!


「くっそっ! どけぇっ! どけってんだろーっ!」


減速することなく、そのまま立ちふさがったMSを一刀両断した。

よく見てなかったけど味方じゃないことは確かだ。ごめん!


「あっ?」


彼女の背後! F91が照準を合わせている。でも、スイさんは気づく様子がない。


(ダメだ!!!)


ぼくは無意識のうちにビームザンバーを投げていた。剣は見事敵にクリーンヒットしたが、破壊まではいかない。でもスイさんは背後にいる敵に気づいて止めを刺した。


「スイさん! スイさんですよね!? ぼくです、トビアです!」

「トビアくん!?」


剣を拾ってバタラと背中合わせになる。

よかった、バタラとカメラが繋がった。

でも、カメラに移ったスイさんはかなり疲労していた。そりゃそうだ、馴れない戦闘をやっているんだから。特にこんな乱戦。


「聞いて、マザーバンガードにはもう戻れないわ! さっきベラ艦長が……」

「わかってます。ぼくらは早く脱出ポッドに入らないと」


そのとき、だった。後ろで何かが光った。とてつもない光だ。そう、あの加減はたしか、ビームライフルやヴェスパーの……。


「きゃあああ!??」

「スイさん!」


カメラごしに、スイさんの悲鳴を聞いてはっとした。あわてて後ろを向くと、さっきまでピンピンしていたのに、今はもうボロボロになっているMSが。

流れ弾を受けたらしい。バタラの右半分がなくなっていた。

ダメだ、胸部まで焼かれてる。


「スイさん!バタラは爆発する、早くこっちに!」


スイさんもそう感じたらしい。ぼくが叫ぶ前にコクピットを開いていた。

ぼくは急いでスイさんを中に入れると、その場を離れた。爆発に巻き込まれちゃたまんない。

後方で何かが一際でかく光った。バタラが壊れたのだろう。


「……あ!」


ちょうどそのとき、ベラ艦長のコアファイターが近くまで投げ飛ばされてきた。ぼくはとっさにそれを受け止める。


「艦長! なにやってるんですか! 丸腰でこんなこと……」

「シーブック! シーブックが! シーブック!!」

「え?」


シーブック?


「シーブック! いやあああああっ!」


こんな取り乱してるベラ艦長始めてみた。

……まさか!

ぼくは無意識に前を見た。
黒いガンダム……X2が、背を向けて飛んでいってる。

そして、ボロボロの状態で地球に自由落下しているX1の姿も。


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