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※原作をそのまま文にした回(4巻後半〜5巻前半。トビアがシェリンドンと対話〜ベルナデットを助けるとこまで)
途中話がだいぶ飛びます。
ヒロイン出てこないので飛ばしても大丈夫です。
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「こらー! 出せーっ! ここから出しやがれーっ!」
シェリンドンさんの部下? の人達に呼び出されたかと思ったら、半ば強引に相手の艦につれられてしまった。
しばらくしたらクロスボーン・バンガードが連邦軍と戦闘を始めた、なんていうから驚きだ。
ぼくは出すように頼んだけど、一向に出してくれる気配はない。途中から叫んでドアを乱暴に叩いていた。
つーか、どうしておれだけこっちの艦なんだ。どうして閉じ込める?
「マザー・バンガードに戻せーっ!」
がいん! と嫌な音がした。
殴ってるうちに、拳を変なところに打ち付けたらしい。猛烈な痛みに襲われた。
「ててててて! 」
思わずもう片方の手で押さえる。やばい、痛すぎて涙出てきた。
「およしなさいトビア君! あなただけでも巻き込むまいというベラお姉様の御心がわからないのですか?」
しゅう、とシャッターが開いた。
窓越しに、部下をひとりつけて、清まし顔をしているシェリンドンさんが。
シェリンドンさんは続けた。
「あなたの身がらは私があずかりました。これからは私のもとで真のニュータイプとなるべく励んでください。ともによりよい未来をめざすために――ね」
「きさま!? そんな一方的な言い分があるか!」
「あ! おい! こら! あけろーっ……」
……無理だ! 今ぼくが何を言っても聞きやしない。
「くそ!」
こうなったら……!
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「ベルナデットをはなせーっ!」
どうにかしてX3を手にしぼくは、キンケドゥさんたちと合流しようとした。
しかし、その行く手を木製軍が阻む。でかいMAとそれを囲むように女の人の顔をしたMSが数機。
とにかくがむしゃらに敵を倒していった。ひっつかんできた剣が思うように使えなくて、焦っていたのもあるかもしれない。
そして、ばかでかいMAにベルナデットが乗っていることを知った。
『フ、フハハハ、フハハハハハ』
「この声はドゥガチ? クラックス・ドゥガチだな!ドゥガチがその中にいるのか?」
『そのとおり――このMAを動かしているのは――この私……クラックス・ドゥガチのそのひとりだよ!』
MAの動きが急に激しくなった。
密着していたぼくは素早く離れた。しかし、それと同時に、MAの上部が開いた。
そこには、形だけのコクピットに座っているベルナデットの姿が。
『完全自動機と言っただろう? ベルナデット……は、は、は。これはそのためのテストなのだよ!』
MAは、怯えるベルナデットをちらつかせながら、激しく攻撃してきた。
『さあっ! どうするっ! 小僧! おまえの助けようとしている娘は話が手の内だ! 攻撃できるかね?』
「何! 何だと!」
彼女は……ベルナデットは……ドゥガチ、自分の娘じゃないかっ!
「それが人間の言うことかっ! きさまーっ!」
『ははははは。笑わせるな。戦いに汚いきれいはない。
戦国の世となれば、子が親を殺す親が子を殺すなどというのは珍しくもない! 事実過去の支配権の争いなどはおおよそそんなものだ!
それが人間の本性だ! 血のつながりなど迷いごとにすぎん!これは――戦争なのだよ』
MAは剣を手にした。
『ははは、もっともこの場合少し違うのは、お前が一度も抱いたこともないわしの娘のために勝手に攻撃をためらっている。ということだがな!』
「くうっ!」
強い! ばかでかいMAから繰り出される攻撃の範囲が広くて完全には避けきれない。
それに、ドゥガチ自身も言ったように、下手に破壊したらベルナデットが巻き込まれる。
どうにか、どうにか手はないのか……!
『右腕部Iフィールド使用限界! 冷却開始!』
「う?」
しまった! Iフィールドは連続して使えない! しかも冷却のほうが余計に時間がかかる。15秒間全くの無防備だ!
その一瞬、気をそらしたのことをドゥガチは逃さなかった。
MAの大型クローが、X3のど真ん中に直撃したんだ。
「ぐあふっうっ!」
あまりの衝撃に脳が揺れる。
その瞬間、ぼくの頭は真っ白になった。
『左腕部Iフィールド使用可能時間まであと13…』
『フ、フン?』
『8…7…6…5…』
『私は戦争をしているのだよ!』
『3…2…』
「トビアーッ!!!」
――――っ!!?
『おおおおおっ、きさまっ、サーベルを?』
それは、ほとんど本能に近かった。
気絶していた脳に、ビームザンバーが来る。なにかがそう伝えてくれた。だからぼくは、Iフィールドでそれを捉えた。
「クラックス・ドゥガチ! あんたがどう思っていようと……おれのほうは、戦争をやってるつもりなどなーいっ!」
レバーを思いっきり引いた。X3が、ぼくの命令に従って、MAのビームザンバーを押し返した。
『うおおおお!? ば! ばかなっ!MAが……パワー負けするなどと! き、きさまあっ!?』
「ベルナデットは……返してもらう……いや……」
『きさまの……もの……では、あるまいっ!』
「そうだな。ならば海賊らしく……いただいてゆくっ!」
MAの上部をこじ開け、球体のコクピットをもぎ取った。
『クオオオオオオ!!』
MAが長いクローを振り回した。ぼくはコクピットを片手に距離を取る。
クローがこちらを向いたら。かぱっと大きく口を開け、ビーム砲が姿を現した。
迷うことなどない。ぼくは、ビームザンバーをど真ん中に突き刺した。
『ごおおおお!!?』
さっき、MAがセーフティー解除をしてくれたお陰で、ビームザンバーが本来の能力を発揮できるようになった。
ぼくは、ビームザンバーのスイッチを押した。
大型クローは、ビームザンバーの攻撃を受け粉々に砕かれた。
「ベルナデット!」
「トビア!」
ベルナデットを閉じ込めていたコクピットが割れた。
ベルナデットは両手を広げながら、ゆっくり、ゆっくりやってくる。
ぼくも、両手を広げて彼女をしっかり受け止めた。
「え…へ…、来たよベルナデット」
「うん! うん!」
抱き締め合いながらお互いの存在を確かめた。
ベルナデットの声は、震えていた。
……でも、いつまでもこうしている暇はない。
すぐにでも行かなければ、マザー・バンガードのもとへ。
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