▼ 01
拾われて、クロスボーン・バンガードとして活動し始めてからしばらく。
ぼくはキンケドゥさんや艦長のおかげで、なんとかここに慣れることができた。
そして努力の甲斐あってか、正式なパイロットに見事就任。捕獲したベズ・バタラを任せられるようになった。
遅れをとらない、足手まといにならない。そのために、今日も自分の機体のチェックやシュミレーションを行っている。
さて、ココからが本題だけど、ここらでぼくは好きな人ができた。
……いや、ベルナデットじゃない。別な人。
「トビアくーん」
「あ、はーい!」
格納庫でジュースを飲んでいると、あの人から呼ばれた。
ぼくはカップを持ちながら自分の機体、ベズ・バタラまで飛んだ。
「休憩中だった?ごめんね、もうちょっとしてからでもいいよ」
バタラのコクピットの前で書類とにらめっこしてた女性が、ぼくを見たとたん申し訳なさそうに笑った。
ぼくはその人を見るなり、全身の体温が上がっていくのがわかった。
「い、いえ、大丈夫です。やれるときに、やれることはやらないとですし」
「んー……そうだよね、木星軍がいつ来るかわかんないし」
ペンをあごに当てて、気難しそうにしわを寄せる彼女。……その横顔も、きれいだなぁと思ったり。
「えらいね、トビアくん」
「い、いえ、そんな」
ぼくはぶんぶんと手を横に振った。彼女に褒められてしまった。やばい、うれしい。
……そう、ぼくが好きな人はこの人。名前はスイさん。
ぼくより7つくらい年上で、MSのメカニックをしている。補給が入ってからは、主にX2とぼくのバタラを見てくれている。
どうして、って聞かれると少し困る。だっていつの間にか好きになったんだから。
「早速だけど、右腕の動きが悪かったでしょ?そこをチェックしてもらってほしいの」
「わかりました」
ぼくは素早くバタラに乗った。スイさんはコクピットの外から屈んでこちらを見ている。
……うわ、うわわ、なんか、すごく恥ずかしいぞ。
「み、右腕動かします」
バタラの右腕を動かした。ぐーんと、機械の動く音がする。
「少し反応が遅いかな」
「そうですね」
「んー、コクピットが悪いのかなあ」
ぶつぶつ言いながら、スイさんは四つん這いになってコクピットの中に入ってきた。
ぐっと、彼女との距離が近くなる。
「モニターは……あー、ここの回線が悪いかな」
長い黒髪を垂らして、スイさんはごそごそと腕を動かす。ち、近い。少し自分が動けば髪の毛に当たりそうだ。あ、なんかいい匂いがする……。
あああ神様、早く終わらせて下さい!でも早く終わらせないで……!!
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