四月三日 はれ
今日はあたらしいじゅく生が来た。さか田ぎんときだ。入じゅく一日目なのに、よだれをたらしながらいねむりをしていた。となりのせきのわたしまで目立ったら、どうしてくれる。

八月十日 晴れ
銀時がけんか売ってきてうざい。でも今日はいつもとちがった。なぜか、ひまわりをくれた。ありがとうと言ったら、銀時は顔を真っ赤にしながら走っていった。うれしかったはずなのに、なぜか息が苦しくなった。どうしてくれる。

十月十日 雨
銀時がいなくなった。松陽先生がいなくなって、塾が閉鎖して一か月。ついに銀時まで姿を消してしまった。探し回っていると、いつの間にかお気に入りの小紋の裾が泥で汚れていた。どうしてくれる。

十月十日 晴れ
店先で掃き掃除をしていると、銀時がやって来た。勝手にいなくなって、勝手に戻ってきやがった。塩をまこうとしたけれど、間違えていつかの誕生日に渡そうと思っていた贈り物を投げつけてしまった。顔面ヒット、ざまあみろ。鼻血を垂らしながら「ありがとな」なんて笑う銀時を見ていると、ただただ「おかえり」としか言えなかった。お気に入りの手拭いが鼻血で汚れてしまった。どうしてくれる。

十二月一日 曇り
小太郎ご来店。長かった髪が短くなっていて、最初誰だかわからなかった。銀時と一緒に晋助の根性を叩き直しに行ったけれど、失敗したらしい。相変わらず仲良しな銀時たちが羨ましい。

十二月二十四日 雪
真選組の局長さんが百本のバラの花束を買っていった。ホワイトクリスマスが、ブラッドクリスマスにならない事を願う。「万事屋は凄い奴らかもしれん」花束を作っている間、局長さんが言っていた。どうも、万事屋が真選組のゴタゴタを解決したらしい。

十二月二十五日 雪
閉店作業をしていると、銀時がやって来た。二人用の小さなホールケーキを買ってきてくれた。ケーキの上に乗っている大きないちごをどっちが食べるかで揉めたけれど、最終的に先っぽの甘い部分を食べさせてくれて嬉しかった。マフラーをプレゼントするととても喜んでくれて、こっちまで嬉しくなった。

二月二十二日 曇り
久し振りに会った銀時は、また新たな傷を負っていた。いったいどこで何をしてたのか。とてもじゃないけれど、その疑問をぶつける事はできなかった。その疑問をぶつけたら、銀時がまたいなくなってしまいそうな気がして怖かった。

四月七日 晴れ
定休日。近所の小さな公園でお花見をしていると、特に待ち合わせているわけでもないのに銀時がやって来た。なぜいつも怪我が絶えないんだろう。一人分のお弁当を二人で分け合って、くだらない話をしながら桜を眺めた。桜を見上げながらほほ笑む銀時を見ていると、どうしようもなく愛しい気持ちが込み上げてきた。


 ──ふらりと来店した坂田に買い物をしている間の店番を依頼した詩乃は、彼が日記帳を持っている事に気付くと、荷物を放り投げながら慌ててそれを取り上げた。気が動転し、奇声を発しながら日記帳を床に叩きつける詩乃。同じく奇声を発しながら日記帳を拾い上げた坂田は、二度と奪われまいと両手でそれを抱きかかえた。

「それっ……どっ、どこまで読んだの!?」
「べ、別に大して読んでねーよ……「どうしようもなく愛しい気持ちがなんたらかんたら」ってとこまでだったっけな」
「ほぼほぼ読んでんじゃん。それ、返して」
「やなこった。返したら、どうせ捨てちまうんだろ」
「捨てない。燃やすだけ」
「なおさら返せるわけねーだろ。俺にくれ」
「……もういい。好きにすれば」

 消え入りそうな声でそう呟きながら買い物袋を覗き込んだ詩乃は、卵が割れている事に気付くと溜め息交じりに立ち上がった。

「卵買ってくる」
「俺も行く」
「お店どうすんの」
「いったん閉めりゃいいだろ」
「……勝手にすれば」

 入念に戸締まりをする坂田をよそにさっさと歩き出した詩乃の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。すぐに追いついた坂田は、詩乃の顔を覗き込みながら困惑したような表情を浮かべた。

「な、なに泣いてんだよ……悪かったって。勝手に日記読んじまって、ごめんな」
「一生かけて償ってくれるなら許す」
「任せろ。一生だろうが来世に持ち越しだろうが、気の済むまで償ってやるよ」

 詩乃の肩を抱き寄せた坂田は、赤く腫れた瞼が人目に晒されてしまわないように彼女の目元を覆い隠した。坂田の腰に腕を回した詩乃は、照れくさそうに唇を噛み締めながら彼にそっと寄り添った。





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