血の匂いや死にゆく者のうめき声が、坂田銀時の神経を蝕んでいく。暗闇の中、顔を強張らせながら走り出す坂田。どんなに全力で走り続けても、血の匂いやうめき声から逃れられる事は出来ない。

「銀……き……」

 耳元で聞こえる誰のものともわからない苦しげな声を振り切るかの如く、転びそうになりながらも暗闇の中をがむしゃらに走り続ける坂田。しかし、そんな坂田を嘲笑うかのように、血の匂いやうめき声は彼の脳髄を侵食していく。

「銀時」

 凛とした声が響き渡った瞬間、暗闇に射し込んだ一筋の光がゆっくりと広がりながら坂田を優しく包み込んだ。
 おもむろに目を覚ました坂田は、エプロン姿の詩乃を見上げながら頬を緩ませる。坂田の顔を覗き込む詩乃もまた、穏やかな笑みを浮かべていた。

「大丈夫?」
「何の話だ?」
「うなされてたから」
「気のせいだろ」
「そっか、気のせいか。ご飯できたから、食べよ?」
「ああ。ありがとな」

 差し出された詩乃の手を引き寄せた坂田は、バランスを崩した彼女を抱きとめながら唇を重ね合わせた。突然の口付けに驚きながらも、目を閉じながら坂田の背中に腕を回す詩乃。詩乃と過ごす日々は、坂田に「何かを護りたい」という感情を思い出させるほど鮮やかな彩りに満ち溢れていた。





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