甘味処で働いている詩乃と、裏社会に身を置く中村京次郎──言わば「住む世界が違う」二人を繋いだのは、一杯のあんみつだった。

「いらっしゃいませ!あんみつ一つ、お持ち帰りですね」

 決まって毎日あんみつを買いに来る極道者として中村を覚えていた詩乃は、いつものように朗らかな笑みを浮かべながら気持ちの良い対応をした。

「いや、今日はここで食ってくわ」
「失礼いたしました、店内でお召し上がりですね。お好きなお席にどうぞ!」

 カウンター席に座った中村は、目の前のキッチンであんみつを作り始める詩乃を眺めながら頬杖をついた。不意に顔を上げた詩乃と目が合った瞬間、無意識の内に穏やかな笑みを浮かべる中村。初めて中村の笑顔を目の当たりにした詩乃は、はにかみながらさり気なくあんこを増量した。





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