流川への謝罪を終え、足早に歩き出す南烈を慌てて追いかけた福富詩乃は、不意に立ち止まると後ろ髪を引かれるかのように振り向いた。

「ナガレカワ!」

 馴染みのない呼称で呼び止められた流川は、訝しげな表情を浮かべながら振り向いた。

「藤真って人、知っとる?」
「あー……翔陽の?」
「翔陽っちゅー学校なんやな。おおきに!」
「あのさ」
「ん?」
「ルカワ」
「ルカワ?」
「ナガレカワじゃない。ルカワ」
「ああ、ルカワいうんか。勘違いしとったわ、すまんな」

 ほな、また!──満面の笑みを浮かべながら踵を返した詩乃は、南に追いつくと僅かに丸められた背中を元気付けるように軽く叩いた。

「何すんねん」
「神奈川行こ!」
「は?寝言は寝て言えや」
「寝言やない。次は藤真に謝らな」
「あー……明日でええやろ」
「せっかく勇気出してナガレルカワに謝ったんやから、この勢いのまま行かな」
「ナガレルカワ?」
「あっ、混ざってもうた。ルカワや、ルカワ。ナガレカワやなくて、ルカワいうんやて」
「ふーん」
「ほな、いこか」
「この時間やと、大阪帰る頃には終電なくなっとるやろ」
「電車がないんやったら、夜行バスで行けばええやん」
「お前が夜行バス乗りたいだけの話ちゃうんか」
「当たり前やろ」
「何や、アホらしなってきたな……もうええわ、男の決意っちゅーもん見せたろやないか」

 詩乃とハイタッチを交わした南を、力強い眼差しで前を見据えながら歩調を早めた。





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