かぶき町という土地柄からか、万事屋には「どこそこのスナックの何とかちゃんに贈る花束を買ってきてほしい」という依頼が定期的に舞い込んでくる。坂田が行きつけとしているかぶき町の片隅にある小さな花屋の店主は、かつて松下村塾で共に学んだ幼なじみの朝比奈奏。

「いらっしゃいませ!」

 アレンジフラワー制作に没頭していた奏は、来客を知らせる鈴の音が鳴り響いた瞬間、快活な笑みを浮かべながら振り向いた。

「お、銀時じゃん。いらっしゃい」
「よう。この予算で頼まァ」
「はいよ」

 作業台のすみに置かれた一万円札を一瞥した奏は、頭の中で完成図を思い浮かべながら花束を作り始めた。よっこらせ、と椅子に座った坂田は店内を見渡しながら口を開いた。

「ひまわりって夏の花だよな?」
「一般的にはね」
「何で一年中置いてるんだ?」
「特別な花だから」
「ふーん」

 刹那、坂田の脳裏を過ぎったのはいつかの晩夏の記憶。ひまわりを握り締めながら駆け抜けた畦道、黄色い花びら越しに笑う少女の笑顔。大人になった少女──もとい奏は、あの頃と変わらない笑顔を浮かべながら大好きな花に囲まれていた。










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