深夜一時、坂田の腕の中で目を覚ました奏は寝ぼけ眼で天井を見上げた。意識がはっきりしてくると同時に、天井を這いずり回る小さな黒い影に気付く奏。恐れおののく奏に叩き起こされた坂田は、眉間にしわを寄せながら薄く目を開けた。

「……何だ、どうした?」
「……いる」
「いる?何が?」

 奏が無言で指差した天井を目を凝らしながら見上げるものの、黒い影が息を潜めてしまった故に普段との違いがわからず首を傾げる坂田。しかし、奏の怯え様からただならぬ事態が起こっている事を察した坂田は、息を殺しながら彼女を抱き締める。黒い影の微かな足音を感知した奏は、たくましい背中に腕を回しながら坂田の胸に顔を埋めた。

「奴がいる」
「奴って……」

 魑魅魍魎の類を思い浮かべた坂田の鼓膜を、黒い影の足音がそっとくすぐった。そういう事か、と呟きつつ奏から離れる坂田。奏に布団を掛けながら電気をつけた坂田は、およそ五分間のすったもんだの末に黒い影を撃退した。黒い影の亡骸を包んだちり紙を台所のごみ箱に捨てた坂田は、布団から顔を出す奏に穏やかな笑みを向けながら電気を消した。

「ありがとう」
「いいって事よ」

 そう言いながら布団に潜り込んだ坂田は、落ち着きを取り戻した奏に覆い被さった。坂田の唇を受け入れた奏は、愛欲にまみれた瞳で彼を見上げた。

「やらしい目で見んな。襲っちまうぞ」
「いいよ、襲って」
「お、言ったな?後悔すんなよ?」

 挑発的な笑みを浮かべた奏は、坂田を抱き寄せながらその唇を貪った。奏を抱きすくめた坂田は、負けじと舌を絡ませながら応戦する。口付けの狭間に見つめ合った二人の瞳には、熱を帯びた光が宿っていた。





お題サイトTOY様より拝借いたしました。






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