午前零時。寝支度を済ませた奏は、窓辺に座りながら夜空を眺めていた。夜空を切り抜いたように浮かんだ満月の光が、孤独感に苛まれている奏を優しく包み込む。何の前触れもなく携帯電話が鳴り響いた瞬間、小さく飛び上がった奏は反射的に通話ボタンを押した。

「はい、もしもし」
「お疲れ」

 電話越しに聞こえる土方の愛おしい声に頬を緩ませた奏は、嬉しげな眼差しで月を見上げながら会話を紡いだ。

「お疲れさま。電話なんて珍しいね、どしたの?」
「あー、その、何つーか……最近、会えなくてごめんな」
「そんな、お互い忙しいんだから会えないのはしょうがないよ」
「そうは言っても、恋人らしい事してやれてねェからな」
「それじゃあ、次に会った時いっぱい甘えちゃおっかな」
「ああ、楽しみにしてる。もうすぐ宅配便届くと思うから、受け取ってくれるか」
「宅配便?こんな時間に?」
「無理言って、この時間にしてもらったんだ。じゃ、またな」

 言うが早いか通話を遮断した土方は、携帯電話を懐にしまいながら奏の自宅マンションの扉を開けた。爽やかな配達員を装い、奏にバレる事なくオートロックを突破する土方。チャイムが鳴らされると同時に玄関へ向かった奏は、扉を開けた瞬間に差し出された薔薇の花束を前に目を白黒させた。花束越しに顔を覗かせた土方は、耳を赤く染めながら口を開いた。

「誕生日おめでとう」
「わあ、ありがとう!とりあえず、上がって?」
「おう、邪魔するぞ」

 101本の薔薇からなる花束を両手で受け取った奏は、朗らかな笑みを浮かべながら土方を招き入れた。予想外の贈り物もさることながら、しばらく会えていなかった土方との再会に心を踊らせる奏。二人分のコーヒーを用意した奏は、胡座をかいて座る土方の膝に頭を乗せながら寝転ぶ。シャンプーの香りを漂わせる頭をそっと撫でた土方は、穏やかな表情を浮かべながら奏と視線を絡ませた。

「本当にありがとう。誕生日だった事、すっかり忘れてた」
「普通、自分の誕生日忘れるか?」
「十四郎の事ばっか考えてたからね」
「よく恥ずかしげもなく言えるな」

 赤面する土方を見上げながら悪戯な笑みを浮かべた奏は、おもむろに薔薇の花束に手を伸ばした。

「これ、何本あるの?」
「101本」
「101本?」
「……花屋の店員曰く、「これ以上ないほど愛しています」って意味なんだと」
「十四郎は、これ以上ないほど私のこと愛してくれてるの?」
「愛してるに決まってんだろ。じゃなきゃ、薔薇の花束なんて買ってこれねェよ」
「ふふ、知ってた。ありがとう。私も十四郎の事、愛してるよ」
「知ってる」

 コーヒーのほろ苦い香りが漂う中、甘ったるい会話を紡ぎながら奏にまたがった土方は、情欲を孕んだ眼差しで彼女を見下ろした。ゆっくりと覆い被さってくる土方の背中に腕を回した奏は、目を閉じながら彼の唇を受け入れる。執拗なまでに奏の咥内を犯した土方は、彼女を抱きかかえながらベッドに向かって歩き出した。





お題サイトTOY様より拝借いたしました。






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