とある休日──電車を降り改札を出た奏は、辺りを見渡しながら猿飛を探し始めた。そんな奏に気付いた猿飛は、溜め息をつきながらも軽い足取りで歩き出す。気付かれまいと大きく迂回しながら奏に歩み寄り、背後から膝カックンを食らわせる猿飛。突然の出来事になすすべなく両膝を地面に打ち付けた奏は、目を白黒させながら振り向いた。

「猿飛!ごめん、待った?」
「え?いや、あの、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」

 勢い良く立ち上がった奏の両膝に青紫色の痣を発見した猿飛は、その痛々しさに顔を歪ませた。猿飛の視線を追った奏もまた、予想外の負傷に苦笑いを浮かべた。

「全然大丈夫そうじゃないんだけど」
「ほんとだね」
「……ごめん」
「猿飛がデレた」
「私がデレるのは好きな人の前だけだから」
「だよねー。猿飛、私のこと大好きだもんね」
「それはないわ」
「あーあ、振られちった。じゃ、そろそろ行こっか」

 からかう事で猿飛の罪悪感を融解させた奏は、駅の目の前にあるショッピングモールへ向かって歩き出した。滅多にない奏からの誘いを内心楽しみにしていた猿飛は、軽やかな足取りで歩きながら彼女と肩を並べた。

「何か洋服でも買うの?」
「ううん、総悟への誕生日プレゼント」
「何よそれ、一人で行けばいいじゃない。私に対する嫌がらせ?」
「さすが猿飛、鋭いね」
「地獄に落ちろ」

 眉間にしわを寄せながら暴言を吐く猿飛だったものの、いつになく真剣な様子で沖田へのプレゼントを選ぶ奏の姿に次第に感化されていった。様々な店を巡りながら、ああでもないこうでもないとプレゼントを吟味する二人。最終的にペアのブレスレットを選んだ奏は、ベンチで休んでいる猿飛にアイスクリームを差し出した。

「ありがとう。本当にご馳走になっちゃっていいの?」
「うん。今日のお礼」
「喜んでくれるといいわね、沖田君」
「……うん」

 沖田にプレゼントを渡す瞬間を想像した奏は、はにかみながら小さく頷いた。いつも飄々としている奏の女子高生らしい一面に、小さな笑みを咲かせながらアイスクリームを頬張る猿飛。しばらく談笑しながら休憩していた猿飛と奏は、銀魂高校へ向かって歩き出す。銀魂高校に辿り着いた二人は、四方山話をしながら剣道場へやって来た。剣道着姿の坂田を発見した猿飛は、脇目も振らず走り出す。猿飛の後ろ姿を見送った奏は、辺りを見渡しながら休憩中の土方に歩み寄った。

「お疲れー」
「おう。総悟なら裏の水道んとこ行ったぞ」
「さすが土方、先手を打って答えてくれるなんて。出来る男は違うね」
「はいはい。さっさと行ってやれ」
「うん、ありがとね」

 ふわりと微笑んだ奏は、鼻歌交じりに剣道場の裏手にある水道へやって来た。水飛沫を上げながら顔を洗っていた沖田は、奏の気配に気付くなりおもむろに上体を起こす。予想外の奏の登場に驚きながらも嬉しげな笑みを浮かべた沖田は、差し出されたスポーツタオルをそっと受け取った。

「サンキュ」
「ん。あと、これ」

 照れくさそうに俯いた奏は、後ろ手で隠し持っていたプレゼントをぎこちなく差し出した。肩にかけたタオルで濡れた顔を拭き始めた沖田は、首を傾げながら紙袋を受け取る。紙袋の中身を確認した沖田は、箱から取り出したブレスレットを凝視しながら口を開いた。

「これは何でィ?」
「誕生日プレゼント」
「マジでか、すげー嬉しいわ。しかも、ペアなんだな」

 頬を緩ませながらブレスレットを装着した沖田は、奏の手首にも同じものが着いている事に気付くと更に破顔した。ありがとな──そう言いながら奏を抱き寄せた沖田は、溢れ出す嬉しさをぶつけるように激しく唇を重ね合わせた。










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