いつの間にか真選組屯所の中庭に植えられていたチューリップの花は、青空の下で太陽の光を吸収しながらすくすくと育っていた。そんなチューリップを眺めながら、沖田総悟は懐かしい動揺を口ずさんでいた。
 ──咲いた 咲いた チューリップの花が 並んだ 並んだ 土方消えろ──
 示しを合わせたかのようにタイミングよく現れた土方は、無駄に語呂の良い替え歌に苛立ちながら沖田目掛けて剥き出しの刀を投げつけた。まるで後頭部に目でも付いているかのように軽々と刀を避けた沖田は、無表情ながらもどこか挑発的な眼差しで土方を見上げる。標的を見失った刀が辿り着いたのは、枝切り鋏で作業をしていた庭師のすぐ横、立派にそびえ立つ大木のど真ん中。振り向きざまに土方と沖田を睨み付けた庭師──もとい奏は、舌打ちしながら大木の周りを片付け始めた。

「すいやせんね、庭師さん。うちの馬鹿が手ェ滑らせちまったばっかりに」
「ふざけんな、テメーが妙な歌口ずさんでなけりゃこんな事にはならなかっただろうが」
「どっちもどっち」

 凛とした声でそう吐き捨てながら刀を投げ返した奏は、切り落とした枝を乗せた台車を押しつつ颯爽と去っていった。










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