よく晴れた日の夕方、奏は縁側に座りながら乾いた洗濯物を畳んでいた。最後に高杉と会ってから数カ月、何事もなく穏やかな日々を送る奏。高杉に懐いていた寅次郎は、最初の一カ月間こそ彼の姿を探すような仕草をしていたものの、今では一人と一匹の生活にすっかり慣れている。洗濯物を畳み終えた奏は、膝の上で丸くなる寅次郎の頭を撫でながら茜色に染まる空を見上げた。不意に起き上がった寅次郎は、しなやかな動作で奏の膝から降り、玄関へ向かっていく。一連の行動に違和感を覚えた奏は、首を傾げながら寅次郎の後を追った。

「寅さん、どうしたの?」

 玄関に鎮座した寅次郎は、磨りガラス越しに射し込む夕日をものともせず扉を凝視している。寅次郎の隣にしゃがみ込み、玄関の扉を見上げる奏。程なくして磨りガラスに映り込んだ人影が、ゆっくりと玄関に近付いてくる。扉が開き、玄関が茜色の夕日に包み込まれた瞬間、目を見開いた奏の頬を一粒の涙が伝い落ちた。

「……おかえり」

 涙で目を滲ませながら満面の笑みを浮かべた奏は、玄関に足を踏み入れた高杉に勢い良く抱きついた。奏を抱きとめ、腰に腕を回す高杉。二人の再会を祝福するかのように、寅次郎の尻尾の先がふわりと揺れた。










back/Top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -