揺れる白い身体(三日月宗近/裏)
荒い息遣いと衣擦れの音だけが闇の中、響いている。
ひとつ燈された蝋燭の灯かり。
その仄かな光りに映し出されるは、
真っ白い肌を紅く染めた可愛い主の姿だった。
俺はいつもの服をしっかりと身に付け、
一方、主は俺の手によって肌蹴させられ乱された着物。
そしてその上から麻の縄を掛けられている。
両手を背で結わく後手縛り。
その縄を白く柔い胸に巻き付け、更に天井近くの梁に通し身体を少しだけ吊るし上げている。
「いつもは見上げられているが、こうして下から主の顔を見上げるのも悪くないな」
腰を少し折り、その顔を覗きこむ。
白い肌は紅潮し、額に汗を滲ませて、なんと艶めかしい。
辛いのであろうな。
細い顎に指を添わせると、主はぷいっと顔を反らした。
怒るのも無理はない。
これは合意の上ではないのだから。
「あまりに辛かったら言ってくれ。解くことはできないが、多少緩めることはできる」
「っ……」
梁と彼女を結ぶ部分の縄に触れると、その身体は思った以上に大きく左右に揺れる。
ぎし、ぎし、と小さく板が音をたてた。
苦しくないよう、でも少しも動く事ができないようにきつく縛りあげた身体。
柔らかく、いつもは丸い月のような乳房は縄の間から突き出て、
先端の桃色の突起は堅く立ち上がっている。
「こういう状況で感じてくれているのか?」
「っ………」
主は唇を噛みしめて俺を睨む。
自由にならない身体は揺すれば、その体重のせいで軋む梁が、
耳障りな音を立てるばかり。
「抵抗しないのだな。あまり音を立てると……誰か来てしまうのが怖いのか?」
「ど……して……こんな」
「さて。どうしてかな?」
吊るされている、と表現したが、両足ともに半ば畳に付いている。
俺とて、主に酷く苦しい想いをさせたいわけじゃない。
「俺は気持ちのいいことしかしない」
「こんなのっ…全然っ……んっ」
張りつめている桃色の突起を人差し指先で優しく擦る。
それだけで主の身体はびくりと跳ねる。
「あ……んっ……」
「気持ち良くないか?」
するすると指で擦り、弾く。
堅いそこはまるで反抗するかのように、
俺の指にその存在感をこれでもかと主張してくる。
「よく……ないっ…です!」
「ほぉ……では」
弄っていた指をおろし、今度は乳房全体を下から持ち上げるように掴み、
その先端を口に含む。
「っっっ…!!!」
「ふふ……んっ…」
勃ちあがった突起を舌で執拗になぶる。
こりこりとした感触が癖になりそうだ。
息を何度も呑む音が聞こえる。
必死に声を押し殺している。
「っ………っ………ゃ……」
「ふ……ん……はあ……」
上下の歯で挟み込み少し力を加えると、彼女の身体が跳ねた。
「悪い、痛かったか?」
そこを噛んだまま喋る。
言葉を発するたびに、突起を舌が刺激する。
主は大きくかぶりを振った。
「ならよいな」
「だ、……めぇ……」
張りつめたそこを歯で挟み込んだまま軽くしごく。
「ああっ……やだ……や……っ…」
「ふふ……んっ……ん……ぅ……」
辛くないよう、でも彼女を追いつめるように、
少しだけ力を込めて、痛みを与えて。
「み、かづきさ……ん……あっ……」
俺のことだけしか考えられぬように。
この宵をいつまでも忘れぬように。
辱めて、犯して、でもいつしか夢中になってしまうように、
彼女が悦楽の沼に堕ちるように。
ちゅ、と音を立てて唇を離してやる。
覗きこんだ彼女の頬には涙が伝っていた。
「ははは……泣くことはあるまい。辛いのか?」
「ちが……う……なんで、こんな……」
「気持ちいいか?」
「よく、ない……」
自分の唾液で濡れたそこは桃色から赤色に変化している。
少し苛めすぎたか。
「可哀相に、こんなに赤くして」
指先で再びゆるゆると擦ってやる。
「っ……!」
「こっちは指で……」
もう片方の乳房の中央に立つ突起を人差し指でぐっと押し込む。
主が仰け反る。
白い首筋がむき出しになってそこに刃を立てたくなるのは、元刀の身のさがであろうか。
限界まで立ち上がっているそこを爪でがりり、と引っ掻くと主の唇から呻き声が漏れる。
それはうっとりするほど艶やかで、
思わず口元を綻ばせた。
引っ掻いてはつねり、こりこりと刺激を与える。
「やあ……だめっ……触らない、で……ああっ……んっ……や……あ……」
「そんなはしたない声をあげて。主は本当に可愛いのう」
赤く色づいたふたつの突起、どちらともに刺激を与えながら、
主の耳に唇を寄せる。
ふう、と息を吹きかけると、面白いくらいに華奢な身体が揺れた。
「ははは……主は耳も弱いか」
「っ……」
黒き瞳だけを動かし、俺を睨んでいるようだ。
臆せず、今度は耳を口に含み、
くちゅくちゅと舌で耳を舐めまわす。
小さき耳。
自由を奪われた身体では、この耳で俺の行動を判断し、
俺の言葉をとらえ、身構えることしかできない。
いまは俺の音でいっぱいに満ちている。
俺の愛の言葉も、恨み言も、この耳から主の心の臓へ。
愛しい、愛しい。
「ふ……んっ……ああ、主よ…………」
「っ……やあっ……み、みみ、……ら、めぇ……っ……!」
「主よ……俺だけ……俺だけの主……ああ……っ……んっ……」
「っ……くっ……ふぁ……」
耳輪をなぞり、耳垂をなぶり、小さき穴へと濡れた舌を差し込む。
びくん、と彼女の身体が跳ねる。
一旦耳から唇を離し、囁く。
「身体は正直だな。もっと、気持ち良くしてやろう」
「や、……らぁ……」
「こんなとこ……誰かに見られたらどうする?例えば……」
「っ…………」
「鶴丸に……」
主の身体が強張る。
表情は見えないがきっと酷く狼狽えているのだろうなと考えた。
「……俺のことだけ考えろ」
突起をつまんでいる指に力を込めて意識を自分に向けさせる。
他の者のことなど考えなくてよいのだ。
ぐりぐりと突起を捏ねると、また主の口からは甘い声が漏れる。
執拗に擦られて赤くなった胸の先端はいじられるたびに痛みを覚えるだろうし、
動けぬ、拒めぬ身体は痺れ、もどかしさと切なさで激しい熱を帯びた白い身体が妖しげに揺れる。
もう耐えきれないのだろう。
堰を切ったように、濡れた吐息が次から次へと漏れる。
「あっ……やだっ…………っ……ふ……ぁ…………っ……いた……いっ……ああっ……」
「痛いか?だろうな。痛くしているのだから」
可愛い主よ。
誰にも見せることができないであろう、その淫らな姿を独り占めしていることに悦びを感じる。
ずっとこうしたかったのだ。
*END*
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