ときレス | ナノ


Appreciate all you are. (伊達・裏/Birthday)

誕生日の夜を彼女以外と過ごすなんて考えられなかった。

1年で1日、誰もが主役になれる日。
1年で1日、ワガママが許される日、って思ってもいいよな?

そりゃあいつもいつも我慢してるわけじゃない。
自由にやらせてもらってるときだってあるし、不自由さはさほど感じてない。
実力も人気もそれなりにあるつもりだ。

だけど、あの野獣2人をどーこーするのは結構大変でね。
俺だってたまには誰かに甘えてみたいって思うときもあるわけで。

そんなときに癒しをくれるのが名だった。
彼女は俺に癒しも、勇気も、元気も、愛も……もう、なんだってくれる。
俺が欲しいものをきっと無意識だけど敏感にキャッチして補給してくれるんだ。

サイコーの彼女。

迎える誕生日に、そんな彼女と水入らずで過ごすにはどうしたらいいかを考えたってわけ。



「もういい?」
「ああ。目、開けてごらん」

仕事を終えた名をまるで攫うようにタクシーに乗せて走ること約1時間半。
すっかり闇に包まれたそこには都会の喧騒はなく、静寂に満ちていた。

タクシーから降りるまで目を瞑るように言うと、彼女は何も訊かずにそうしてくれた。
目的地に着き、俺が先に降りて彼女をエスコートする。
目を瞑ったままの彼女の手をとり、背を支え、少し車から離す。
それを見計らい、タクシーは去っていった。

エンジン音が遠ざかるとようやく彼女が口を開く。

「……ここ、どこ?」
口を開くたびに白い息が夜に溶ける。
ふわふわのコートに包まれた身体は、暖かかった車内との気温差に少し震えているようだった。

彼女はきょろきょろと辺りを見渡す。

「ヒント。都内からだいたい1時間半。そして温泉が有名です」
「んー……あっ、箱根!」
「おぉっ!?いきなりのピンポン!?これだけでよくわかったな」
「だって、あそこに書いてあるもん」

うふふ、と笑いながら彼女は目の前の旅館の看板を指差した。
「箱根彩庵」と、美しく加工された木の板に毛筆で書かれたような字体で記されている看板があった。

「ははっ!ずるしたな?」
「ずるじゃないもんっ!……でもどうして箱根に?」
「それは、俺がゆっくりしたかったから」
「本当?」
「んー……じゃあホントのこと言っちゃう」
「なぁに?」

彼女が小首を傾げる。
その頭に手を乗せて髪を撫でた。

「お前と露天風呂に入りたかったから。勿論部屋についてる風呂ね」
「っ……!京也さんのエッチ!」
「ああーエッチで結構。ケモノは欲望にチュージツなのです」
「うぅ……」
「さ。冷えるだろ、入ろう」
「えっ、も、もう!?ま、まだ、そのっ……」
「風呂じゃなくて、旅館の中に。なんだ、名ったら。待ちきれないの?大胆?」
「ちっ、違うもん!」
「ははは!」

二人の吐息が淡く闇に消える。
今にも雪が降ってもおかしくなさそうな気温。

それでも2人でいるとあたたかくて、もう日中の仕事の疲れなんて吹っ飛ぶくらいの元気もらってる自分に気づく。
頬を膨らませる名の肩を優しく抱いて、旅館へと入る。


「わあ!すごーい!」
部屋に入るや否や彼女は感嘆の声を上げる。

通された部屋は純和風の部屋だった。
まず足を踏み入れたのは、畳が敷かれたリビングのような大きな部屋。
真ん中に長方形のテーブルが置かれ、その左右に向かい合うように座椅子が置かれている。
部屋の入り口に立った正面は一面窓ガラスになっており、景色がよく見えると共に光が入る作りで、
解放感に溢れていた。

「きっとここからの眺めはとってもいいんだろうね!」
障子を開けた名は窓ガラスに張り付いて、今は何も見えない闇に沈んだ外を眺めている。
「明日が楽しみだな」
「うん!」

開けた障子を再び閉め、名の興味は次の対象へ。

「こっちは?」

この部屋の右側に、半透明のガラスでできた扉が据え付けてある。
その奥が半分屋外のようになっており、その場所に露天風呂がついていた。

「おぉ〜名が楽しみにしてる露天風呂じゃん!」
「ちっ、違うよ!京也さんが勝手に楽しみにしてるだけじゃん!」
「そうなの?」
「そうだよぉ!」
「ははっ、そうだっけな」
名は唇を尖らせてこっちを振り返る。
露天風呂には絶えず湯が注がれていて、風呂桶の縁から溢れ続けていた。
立ち上る湯気に心躍る。

部屋に戻り、別の扉を開く。
そこはベッドルームだった。ふわふわのベッドが2つ並んでいた。

「わあーふわふわ……!」
名がぽすんとその上に乗って感触を確かめる。
白いブランケットに彼女の体がふわりと沈む。

「ああ……寝ちゃいそうこんな気持ち良くて…」
名はそこに猫のように丸くなる。
まつ毛を伏せて小さくあくびをした。
「えっ、だめよ!?」
俺は慌ててその肩を揺する。
するとパチッと目が開き、にやりと笑みを零す。
「う、そ!ふふっ」

「こーのー悪い子ちゃんめ」
彼女の横になっているベッドへのしかかり、丸くなっている猫を体で覆い尽くす。
見つめ合う猫と大きなケモノ。

「名」
「…………ん……」

頬に手を添えて優しく口づける。
挨拶みたいな、軽いキス。
きっとこれは、お前と過ごす今日という特別な日の始まりの挨拶。

「お誕生日おめでとう、京也さん」
「……この体勢で、いま言っちゃう?」
「うふふ、何回も言っちゃう。だって、京也さんが生まれてきてくれた嬉しい日だから」
「……サンキュ。何回も聞かせて……んっ」
「っ……」

重なり合う唇がだんだんと熱を共有しあって熱くなる。
もうやめないと、ここで朝まで過ごすことになる。
ちゅ、と音を立てて唇を離す。

「続きはあとで、いいだろ?」
「…………」

お前は顔を赤くして頷く。
俺はその額にもう1度軽くキスをしてから身体を解放してやる。
高級なベッドは家のベッドと違って音ひとつ立たない。
それを少し残念に思いながら、彼女の手を取った。



夕飯もとても豪華なものだった。
和食のフルコース。
地元の新鮮な食材と全国各地から取り寄せた食材をバランスよく組み合わせており、
魚介類は全て近海の天然物、野菜は箱根の西麓産、牛肉は国産物だという。
また、料理長自ら焼き物料理を目の前で焼いてくれるサービスだ。

滅多にないそんなもてなしに、目の前の名は興味津津といった表情をしている。
こんなところに来てまで自身の糧にしようとしているのだろう。

「こーら、名。顔が怖いぞ」
「えっ、ホント!?そんな顔してた!?」
「獲物を狙うハンターさながらの表情だった」
「うぅ……それは怖い……」
「今日くらい仕事忘れて休もうぜ?」
「うん、そうしたいんだけど、つい癖で」

彼女は笑う。
料理長はそんな俺たちのやりとりに興味を持ったようだった。

「お料理関係のお仕事ですか?」
器用に手を動かしながら声を掛けてくる。

「はい、レストランでシェフとして働いています」
「そうなんですね。ではお料理のプロでいらっしゃるということで……」
「はい、まだまだ修行中ですが……」
「私もですよ。料理はゴールがありませんからね。いやぁ、それにしても旦那様はお料理上手な奥様で羨ましいですね」

ゴンッ

派手な音を立てて名が手に持っていたコップをテーブルにぶつける。
幸い中身は零れていないようだ。
案の定、可愛い名は真っ赤な顔をして料理長を見つめていた。
俺はその様子を満足げに見守る。口元は緩んでる。こんな顔、外じゃ誰にも見せられねーな。

「おっ、おくさっ……」
「ははっ、そうなんですよ。気を抜くとすぐ太っちゃったりね」

彼女の言葉を遮って俺は笑った。料理長も「わかります、わかります」と続ける。
彼の言葉に名は目を白黒させている。顔は真っ赤だ。
なんてわかりやすいんだろう。あーもーカワイイ。

「仲がとても宜しくてよいですなぁ」
はっはっはっ、と豪快に笑った後、料理長は挨拶をして去っていく。
彼が去った後も名はなかなか落ちつかなかった。

「俺たち夫婦に見えたんだな」
「京也さん否定しないんだもの……吃驚しちゃって……」
「いいだろ?いずれそういう風になるんだから」
「っ!!!!」
「それとも、名はいや?」

豪勢な料理を挟んで向かい合う彼女を見つめると、名は視線をさ迷わせてから俯く。

「いやじゃ……ないです」
耳に届くか届かないかのか細い声だが、その答えに安心する。
俺はふぅ、と溜息を吐いた。そしてグラスを掲げる。
「じゃー問題ナッシング、だろ?さ、食べよーぜ。せっかく料理長が腕を奮ってくれたんだ」
「……うん!」

ようやく落ちついた彼女も再び箸を取った。



風呂から見える景色は最高だった。
いまは冬だから特に空気が澄んでいるのだろう。
加えて、この旅館は箱根でもだいぶ標高の高い場所に位置している。
俺と空を遮るものがない。

たちのぼる湯気の向こうに、
碧い闇に宝石をちりばめたような星空がいっぱいに広がっている。

湯船から腕を出し、空に向かって伸ばしてみる。
肌から零れ落ちる湯。乳白色のそれは肌に乗るとほぼ透明に見えたが、普通の湯よりも少し重たい感じがした。
温泉の湯特有のものだ。

もう片方の手で湯船の底を探ると、栓と思しき物が手に当たった。
間違って抜かないようにしないと。
しっかりそこが閉まっていることを確認したとき、扉越しに小さな声が聞こえた。

「はい……るね?」
「はいはーい。待ってたぜ?」

焦らされてるのかと思うくらいゆっくりとした時間を掛けて開いた扉の向こうに、バスタオルを巻いた名の姿があった。

「タオルとっちゃいなよ」
「だって、恥ずかしいもん……」
胸元のタオルの結び目をぎゅと握る。
そんな姿もぐっとくるから俺的にはもうなんでもオッケーなんだけど、可愛いからからかっちゃう。
「いつも見てるのに?ハダカ」
「そ、それとこれとは違うんです!」
「はいはい。早く、おいで。お兄さんのぼせちゃう」
「んー……京也さん、ちょっとあっち向いてて。タオルとって入るから」
「見てちゃダメ?」
「だーめ。いつまでも入れないよ」
「はーい。紳士な京也さんはあっち向いてまーす」

大げさに身体を動かして彼女に背を向ける。
ざぶんと揺れた湯が、湯船から零れ落ちた。
そうしてるうち、ちゃぷんと音を立てて、彼女が入ってくる気配を感じる。

「もういい?」
「……うん」

肩までしっかり湯に浸かった名は俺の隣にそろりと腰掛ける。
個室に付いている露天風呂とはいえ、大人が並んで3人は入れそうな大きさだ。
二人で並んでもまだ余裕がある。

湯に浸からないように小さく結ばれた髪からのぞくうなじが赤く色づいているのが見える。
残念ながら乳白色の湯は、彼女の全身を見ることを許してくれない。

「んー……従順に待ってたご褒美チョーダイ?」
「うん?」

隣で首を傾げる彼女の顎を掬いあげ、小さくキスをする。
不意打ちだったからか彼女は微かに身体を震わせた。
立ち上る湯気に煽られてますます身体が熱くなる。

「はい、ゴチソウサマ」
「もぉ、いきなりなんだから!」
「だってー待ちくたびれちゃってさ」
「ごめん……!でも気持ちいいね!」
「ああ」

耳に入ってくるのは彼女が立てる小さな音、声、
そして湯の注がれる音、溢れる音。
それだけ。
半分屋外になっているそこでも外の音はほとんど聞こえなかった。
ここのような山奥ではこんな時間になると行き交う車もいないのだろう。

しばらく無言で湯に浸かる。
名も何も言わなかった。

少し強めの風が吹いて、湯気が揺らめく。

「なーんにもない世界に、俺とお前の2人だけみたいだな」
「静かだから?」
「それもあるけど……よっ」
「きゃっ……!」

隣の彼女の腰を掴んで自分の正面へと移動させる。
水の中だからさほど力が要らなかった。
自分の膝の上に乗せると、彼女の目線が俺のより高くなる。
湯船から上半身が出る状態になった彼女は慌てて胸元を両手で隠した。
顔が真っ赤だ。

「俺がそう思いたいのかもしれない。静かな世界でお前とふたりだけでいられたら、それだけで俺は満たされる」
「京也さん……?」
この体勢に不服の言葉を口にしようとしていたのか、名は不意を突かれたような声をあげる。
うなじから湯の名残が一筋、二筋、流れていく。

「なぁ、ゆっくり休めてるか?」
「……え?」
「俺の誕生日は俺のものじゃない。俺を支えてくれるお前に感謝する日だ。名がいるから、俺は生きていられる」
「京也さん……」
「大げさに聞こえるか?でも嘘でも大げさに言ってるわけでもない。お前がいなかったら……もうとっくにダメになってたと思う」

細い腰に両手をまわして距離を詰める。
そのまま甘えるように胸元に顔を埋める。

「ありがとう、名。愛してる」
「京也さん……。うん、私も愛してる。生まれてきてくれて……ありがとう」

名はおずおずと両手を解き、俺の頭を抱きしめてくれた。
体温の上がっている裸の肌は気持ち良くて思わず頬ずりした。

「っ……もぉっ、京也さん、くすぐったい」
「お前の肌、気持ち良くってさ……んっ」
「きゃっ……」
調子に乗ってそこに吸いつくと名の身体が跳ねる。
ちゅ、ちゅ、とリズムよく吸い上げる。

「ん……お前のカラダ、熱い」
「それは、お湯が……っ……」

少し背筋を伸ばして露わになった胸に唇を寄せる。
ふるふる揺れる白い膨らみ、
真っ赤に色づいたそこを求めるように口に含むと、名の口から甘い声が漏れる。

「あっ……んっ、やっ……」
「っ……ふ……んっ……、ぁ……」

これマズイ。
止まんないパターンじゃんね。

「っ……なぁ……」
「ひっ……ゃっ……」

そこを味わいながら、俺の脚にまたがる彼女の両足の間に手を伸ばす。
湯にたゆたう薄い茂みを分け入って指を滑り込ませる。
探り当てたそこに指を入れてみると、湯とは違った感触。

「名」
「な、にっ……っ……」

俺の両肩に彼女の手が置かれる。
指を入れた瞬間にそこにぐっ、と力が入った。

「感じてる?」
「だ、だっ、て……きょ、やさんが……吸っ……」
「吸われるの好き?ここ?」
ちゅう、と音を立てて既にはっきり勃ち上がったそこを吸い上げる。
「……っ、やあっ……っ……」

名は甘い声を上げながら大きく背をしならせる。
そんな姿見せられたらもうたまらない。

「名っ……」

指を更に増やして中を弄る。
彼女がびくんと動くたびに震える胸も絶えず味わって、ああ、もうどこまでも追い詰めたい。

そんな彼女に、また自分も追い詰められている。
湯の中でガチガチに固まってる俺。
もうすっかり戦闘態勢でそれは彼女にもわかってるはずだった。

俺より少し高い位置にいるお前の表情はとろとろに溶けていて、
その背の向こうに満天の星が広がっていて、
充足感とも優越感とも背徳感とも言えない不思議な感情に支配される。

ただハッキリとわかっていたことは、
いますぐに名が欲しいことだった。
見つめ合う瞳。
欲情しきった俺の顔はさぞかしケモノじみていることだろう。
あの二人をもう馬鹿にはできないな。

「名……いい?」
「……うん」
「悪い……っ、我慢できなくてっ……」

なぜか謝りたい気持ちに駆られた。
普段は、どんなことだった我慢できる。冷静なリーダーであるべき自分だ。
でも彼女の前ではワガママになっちまう。
きっと甘えてる。それをわかってる。
欲望に逆らえないことが情けないのか、彼女に自分の愛情を押し付けすぎていることが情けないのか、
それでも衝動は止まらない。
彼女のナカに圧し入ろうとした瞬間、彼女が俺の髪を撫でた。

「我慢、しなくていいよ?……京也さんのこと、好きだから。全部、好き。だから」
「名っ……」

彼女の細い腰を掴んで再び持ち上げ、臨戦態勢の俺の上に移動させ、そのまま身体を下ろした。
浮遊力でうまく身体が落ち切らないかと思ったが、彼女も手伝ってくれた。

「きょ、やさんっ……んっ……」
「っ……あっ……」

気を抜くと離れてしまいそうだ。
夢中でキスをしながら俺は手探りで栓を探して湯を抜く。
注がれる湯量に対して抜ける量の方が遙かに多い。

湯がどんどん減っていくにつれて、彼女の体が元の重力の影響を受けてすとんと落ちてくる。
比べ物にならない刺激、深く繋がる感覚に、背筋を電流が走り抜けた。

「っ、い……っ……きょ、やさん」
「あっ……ああ……」

やがて湯がほとんどなくなった湯船に繋がったままの俺たちだけが残されて、
ふたりとも全身びしょびしょで繋がってるとこはぐちゃぐちゃに熱くて、
風の冷たさが身に沁みたがお前に夢中になっている俺には関係のないことだった。

「名、動いてごらん?」
「どう、やって……?」
「俺がいつもシてるみたいに」

俺が軽く腰を揺らすとぐちゅりと音がする。
湯船の底に膝がつくようになった彼女はそこを支えにゆっくりと腰を揺らす。
不慣れな動作に、口からは悩ましい声が漏れる。

「もっと、ほら」
「う、ん……ぁっ……」

たどたどしい動作を小さく叱る自分は、まるで彼女を調教しているような気分にさえなる。
きっと強い刺激を与えたら彼女はすぐに意識を飛ばしてしまうだろうから加減が難しいのだろう。

繋がってる場所こそ深いがもっと強い刺激が欲しい。

「まだまだだな。オニイサンがお手本見せてあげ、るっ……」
「やあっ……!!」

彼女の腰をぐっと抱き寄せ胸の間に顔を埋め、彼女の顔を見上げながら下からぐ、ぐっ、と突き上げてやる。
俺はきっと大層意地悪な表情をしているんだろう。
泣きそうな彼女の表情に更に煽られ、我を失いそうになる。

「やっ、だめ、そんっ、なっ……!はげしっ…く…しないでっ……あっ……ん」
「もっと、気持ち良くしてやる、からっ……ほら、可愛い声、聞かせてっ……」

刺激に耐えるように彼女も俺の頭を抱え、揺さぶられるがまま。
二人の熟れた声と吐息、繋がった部分のエッチな音だけが響く。

「ら、めっ……わたし、いっちゃ……」
「ああ、イイよ?見ててあげるから、ほらっ……」
「きょや、さんも、一緒にっ……」
そんな可愛いお願いされたら一気にボルテージも上がる。
彼女を穿つペースが上がりやがて何も考えられなくなって……
「ああ、ああ……っ……くぅっ……!!」
「あああっ……!!」

二人ともケモノみたいな声上げて、イッた。



「や、やっぱり温泉はゆっくり浸からないと、な」
「…………」
「名……ちゃん?」
「……別に怒ってないよ」
「その声、怒ってるぅ!」

再び二人で並んで星空を見上げている。
湯船にはたっぷりと湯が満ちて、白いその中にゆったりと身を沈めた。
ぐちゃぐちゃになった身体は仲良く……じゃないけど、流しあいっこして綺麗にした。

「あっ」

突然隣の彼女が小さく声を上げた。

「どうした?」
「私、京也さんへのプレゼント、お店に置いてきちゃった」
「あら。残念。ってわりぃ、俺のせいだな。拉致ってきちゃったから」
「プレゼント……後でも大丈夫?」
「問題ナッシング☆」
「……でも、どうして突然箱根に?」

表情がいくらか和らいだ名はちらりと俺を見上げる。

「これはお前へのプレゼント」
「私に?誕生日じゃないのに?」
「言っただろ。俺の誕生日は俺のものじゃない。俺を支えてくれるお前に感謝する日、だから」
「そんな……いいのに」
「それに、お前が喜んでくれたら俺も嬉しいしな……お嬢様、お気に召しましたか?」
「勿論!お食事もお風呂も最高!」
「はは!そりゃーよかった」

俺は笑いながら、そっと華奢な肩を抱き寄せる。
彼女も俺の肩にもたれかかってくれる。
どうやらさっきのことは水に流してくれたらしい。

「なぁ、次はいつ来る?」
「いつがいいかな?」
「んー……冬もいいけど、春もまたいい景色だろうな」
「じゃあ春にしよっか!」

満開の桜。
散り始めのころがちょうどいいだろう。
散った花弁が、お前の裸の肩に舞い降りてくるところを想像する。

「あー、いまエッチなこと考えてたでしょ」
「えっ、ええ!?」
「鼻の下のびてたもん」
「まじ!?」
「う、そ!でもその反応は……まじですね?」
「……ゴメンナサイ」
「よしよし。素直に謝る真摯な京也さんのことは許してあげましょう」
やけに楽しそうに笑う名。俺もつられて笑った。
「サンキュ」
「お誕生日だしね……お誕生日おめでとう、京也さん」
「……このタイミングで?」
「言ったでしょ、何回でも言うって」
「……やっぱお前、サイコーだな」
「でしょ?」

うふふ、と笑う彼女にキスをする。
欲望を手放した純粋な愛しさを伝えるキス。

来年の今日も、お前が隣にいてくれますように。
愛してる。いつもありがとう、名。


** END ** Happy Birthday Kyoya 2015.01.16. **


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