ときレス | ナノ


歌うよ、お前の為に(透/裏/CDデビュー記念)

今日は、3月の25日。
っていっても、
もうすぐ日付が変わる時間。

少し前と比べると、夜の気温もだいぶ上がり、
疲れた肌に心地よい、ほんのり冷たい風が頬を撫でる。

ビルを見上げると、
でっかい俺。
……つーか、俺たち。
3Majestyも一緒だけど…。

「いよいよ、か…」

明日は俺たちX.I.PのデビューCD発売日。
ま、3Majestyも一緒だけど…。

たっかいビルの壁面に、
でっかい面が貼り付けられてる。

こんな風に、見えるんだな。俺たち。

CDショップの店頭にはびっしりとポスターが貼られてるし、
街頭には宣伝用の旗みたいなのも下がってたり。

長かったような短かったような。
がむしゃらに突っ走ってきた1年間。

でっかい俺はどこを見てるんだろ。
日本一?
世界一?

それとも…

そんなこと考えてたら、
ポケットの中で震えるケータイ。

『もう家にいるよ』

まだ店にいるかとあいつにメールしてみたら、
こんな返事が来た。

「いまから行く」

送信、っと。

会いたかった。
一番に渡したかったから。





チャイムを鳴らすと、
いつもシャワー後に着るルームウェアに身を包んだ名が、カーディガンを羽織った姿で出てきた。

「ごめんね、こんな格好で。メールもらったときにはもうシャワー済ませちゃって」
「……うん…」
「ん?透さん?」
「聞こえる……」
「うん?」

部屋の奥から、聞こえる音楽。
これって…

「あっ!そう!CD発売おめでとう!フラゲしてきちゃった!」
「まじかよ…」
「家帰って来てからずっと聴いてるんだー!やっとCDになって嬉しいんだもん!」
「おいおい…せっかく1番に聴かせたくてCD持ってきたのによ…」
「ん?なに?」
「なんでもねー。おじゃましまーす」
にこにこと嬉しそうな名の身体の横をすり抜けて、部屋に入る。

「…………」

一点に目が留まる。

「あっ、すごいでしょ!?CD買ったらね、大きいポスターもらっちゃった!」

CDジャケットと同じ写真が使われているでっかいポスターが新しく貼られている。
俺はいいとして…キョウヤさんとケントがこの部屋にいるってのがなー。
しかもベッドが配置してある壁に。

「何か飲む?」

名は、俺の考えてることなんて露知らず。
固まって動かない俺の背中に、ノーテンキに声を掛けてくる。

「要らなーい。つーか、名。こっちきて」
「え?」
「いーから。こっちきて、ハイ、座る」
「……う、うん」

俺はベッドを指差す。
お前は一瞬戸惑ったようだけど、俺の不機嫌そうな声に渋々従った。

ぽすんと音を立てて、
ベッドにくぼみがふたつ。

俺と名が並んで座る。
目の前のコンポからは俺たちの曲が繰り返し流れている。

「これ…」
「ん?」
「CD」
「わあ…ありがとう…!」
手に下げていた小さい紙袋を渡す。
新作CDが2枚入ってる。
保存用と、観賞用ってやつ。

名は嬉しそうに受け取り、中を覗く。
「あれ?2枚入ってるよ?」
「あ……余ってたから余計に持ってきた」
「ふーん…?」

壁に掛けられた時計がかちかちと音を立てて秒針を動かす。
3,2,1…

「ハイ、26日。今日がデビューCD発売日」
「うん!おめでとう、透さん!」
「名に1番に渡したくて持ってきた…のに、もう自分で買って聞いてたから……なんか…」
「むかつく?」
「……って答えたのがむかつく」
「………」
「でも…まぁ、嬉しい……かな。へへ」
「ふふっ。透さんの気持ちも嬉しいけど、自分で買うっていうことに意味があると思うの。だって、誰よりも透さんを応援してるもん!」

んっ……
それは不意打ちだろ…

なに恥ずかしいことヘーキで言っちゃってんの…

顔が熱くなる。

「透さん?」
「んな…はずか……可愛いこと言うなよ」
「わ…」

隣の華奢な肩を強引に抱き寄せて、顔を隠す。
真っ赤な顔見られるなんて、こっちの方が恥ずかしい。

「はぁ…いいーにおい。このにおいすげー好き」
「ちょ……シャンプー…かな?」
「シャワー浴びたんだっけ?」
「う、うん…」

首筋に鼻を押し付けて、そのままなぞる。
胸いっぱいに吸い込む名のにおい。

くらくらする。

「じゃー、してもいい?」
「な、なにを…?」
「キス」
「えっ!?う、っ……ん…」

答える前に素早く顔を上げて唇に噛みつく。
不意をつかれたお前の身体は強張り、倒れそうになるからって必死に俺の腕をぎゅっと掴む。

倒したいの、わかんないの?

バランス崩さないようにって必死にしがみつかれても、
俺が体重を前に預ければ、ほら、このとーり。

ぼすっ、と重たい音がして、
二人分の重みにベッドは更にへこむ。
ベッドの外に投げ出された足は絡んで、解けない。

つーか、解かせない。

「う……」
「なに?」

俺の影に覆われて、不安げに眉根を寄せる。
両手をシーツに縫いとめてから、スッと目を細める。

暴れても無駄だって、わかるだろ?

「…も、もうキスしたよ?」
「キスだけなんて言ってないじゃん?」

俺の唾液で濡れた唇てかてか光って、そんなやらしー顔してさ。
顔真っ赤にして言う言葉がそれねー。

「透さ……っ…んっ…ぅ」
「ん……」

言いかけた口を塞いで舌を突っ込む。
逃げ回る舌を絡め取って、弄ぶ。

鼻に掛かった吐息混じりの甘い声をもらしながら、
びくん、って揺れた腰。

「やらしー…感じてんの?」
「ちが、くすぐっ…やっ……ん…」

反論する言葉を遮るように再びキスをする。

そっと片手を彼女の手首から剥がし、
俺の身体に組み敷かれている細い腰に優しく這わせると、
面白いくらいに大きく身体が揺れた。

そのままウエストを撫で上げ、
揺れる胸をぐっ、と掴むと悲鳴に似た嬌声がくっついた唇を通して響いた。

いい加減離してやると、息を乱しながら睨みつけてくる。

「はぁ…はぁ…ん…はぁ……もぉ!い、痛いよ!」
「痛くしたんですー」
「なっ…」
「痛いの好きなドMだろ?」
「ち、違うもん!」
「いっつも大量の料理作らされて、でも頑張ってんじゃん。そういう人はMです。ハイ、M、ケッテー」
「そういうのはMって言いません!が、頑張り屋さんって言うように!」

なんだこの色気のない会話。
押し倒されてんだぞ、お前。

「へえー。じゃ、がんばってもらいましょうかねー」
「えっ!?」

あっさりと彼女を解放し、身体を起こす。
絡めていた足も解き、自由に。

困惑しながらも上体を起こそうとする名の手を取り、
それを手伝おうとする素振りを見せてから…

「まだ終わりじゃないよ?」
「ひゃっ…!」

その身体をひっくり返してうつぶせにベッドに倒す。
俺はベッドから降りて、名の身体を少しベッドから床の方へずらし、
両手をベッドにつかせる。

「ねぇ、どうするつもりだと思う?」
名の背中に抱きついて、唇を耳元に寄せてから、髪を耳に掛けてやる。
ふうっ、と息を吐いてから、その耳を嬲るように囁いてやると、
背中がびくんと震える。

「や…こんなかっこ…」
「あ、わかってんの?この体勢でシたいって」

腹に回していた手を、腕にあたってその存在を主張していた二つの膨らみへと移して、
優しくつぶしてやる。

「っ……ぁ」

二つの膨らみを寄せては揺らし、その形を楽しむ。
シャワーの後は確かブラつけないんだっけな。

パジャマ代わりのもこもこしたルームウェアの上から、
まだ形を潜めている突起を探しだし、爪で2,3回引っかくと、
徐々にそれが立ち上がってくる。

「あ、硬くなってきた。やっぱここきもちいーの?」
「っ…ん……さわ、ちゃ…だめ…」
「もっと触ってやる」

一旦、触り心地サイコーなそこから手を離す。
パーカーの中央にあるファスナーを開けないまま、
腹の部分から両手を中に突っ込んだ。
上手い具合にキャミの中へと入り込めたから、俺の手が触れるのは、
熱くなった素肌。

求めていた柔らかいそこに再び辿りつくと、
すっかり熟れて汗ばんだそこは俺の掌に吸いついてくるよう。

ぐっと力を入れると、指が深く沈んで、また押し返してくる。
真ん中の硬くなったところをきゅっと摘んでみると、
びくんと背中と腰が揺れて、ぶつかった俺のあそこを刺激する。
おまけに、恥ずかしそうに漏れる吐息が俺の耳を刺激するもんだからたまったもんじゃない。

欲望に任せて手のひらを動かす。

「やっ…んっ……と、るさ……ぁ……っっ!」

刺激に耐えているのか、
息をしばしば止めながら、必死に声を押し殺している。

「もっと、聴かせろ、声……」
再び耳元に唇を寄せる。
自分の胸とあいつの背中がぴったりくっつく瞬間。
「だめ…っ……あ……っ……いたっ…」
「痛いの好きだろ?」
「好き、じゃない……あっ…ん…もぉ…やめ…」
「やだね」

視線をふとずらすと、
目に入る白い両腕。
シーツを必死に掴んで、時折手を開いては、またたぐまったシーツを探って掴んで。

無意識なんだろうけど、すごく必死で、快楽を耐えている様子がクる。

「だめ、俺もう我慢できなさそ…」

もこもこウェアの中から手を出して、
今度は彼女のショートパンツに手を掛ける。

「やっ…」

下着ごとそれをずり下ろすと、白くてまあるい柔らかなそこ。

「腰もうちょっとあげて……ほら。そ」

ベッドについた手をしっかりと2人分の身体を支えられるように開かせて、
足も同じように開かせる。
両足の間にそっと手を滑り込ませると、
触ってもないのに、濡れた熱を感じる。

「ぐっちゃぐちゃじゃん」
「っ……」

試しに指を2本突っ込んでみると、
なんなく入っていく。

「なに?やっぱ強引にされて感じるの?Mじゃん」
「ち、ちが…」
「違わない」

俺は履いていたパンツをずり下げて、
痛いくらいに硬くなった自身を出してやる。
中に突っ込んで、あいつの体温を深いとこで感じながらひとつになるって考えただけで、
イッちゃいそうだった。

手さぐりで性急にゴムの準備して、その間中もずっと俺を待つ震える背中から、
視線が逸らせなかった。

逃げられない獲物を食らうような感覚。
後ろから名の全てを奪う。

「いれるよ…もう、我慢の限界…」
「い、っ……あっ……!!!!」
「くっ……ん……」

両手で震える細い腰を掴みながら、押し進む。
久しぶりの名の中は熱くて気持ち良くて、
俺のにどろどろに絡みついて来て、全身溶けちゃいそうで…

最後まで入れると同時にぴったりくっついた身体。
名の身体を後ろから全身で覆い尽くして、中まで犯して。

「誰にも渡さない…俺のもの」
「え…ふ…っ…っ…ん」

腰に片手を添えたまま、もう一方の手で名の顎を掴み、少し上を向かせる。

「ねぇ、見なよ」
「…?」
「キョーヤさんとケントに見られてるの、どう?」
「なっ…!!」
「俺からじゃ見えないだらしねー顔、二人に見られてんの、どう?」
「そんな、つもりじゃ…!」
「見てほしいんじゃないの?なに、名って、Mな上に、変態?」
「ちがっ…!」
「ここもこんなに硬くしてさ」

繋がってるとこの少し上、熱く膨らんだそこを指で刺激すると、
いやいやと首を振る。
その首筋を舌でねっとりと舐め上げてから耳を口に含む。
ぐちゃぐちゃに舌を這わせ、穴に突っ込んで、中をかき回してから、
解放すると、
もう息をするので精一杯みたい。
口開けっ放しで、俺の言った通りのだらしない表情してる。

「ナカ気持ち良すぎて…おかしくなりそ…」
「はぁ…ぁ……んっ…」
「動くよ」
「はぁ…」
「2人にイくとこ見てもらいな」
「!!…やっ……」

両手で、細い腰をがっちりと掴む。
深く沈ませていた腰をゆっくりと揺らし始める。

「はっ…っ……ん……」
「やっ…ぁっ、あっ…んっ!!!」

ほとんど服を着たままだから、
いつものしなやかな背中のラインとか、腰の動きとか、
ちゃんと見えないのがもどかしいけど、すっごい背徳感。

「んっ…っ…ふ……」
「っ…ぁっ、あああ、あっ…ん…!んっ…」

シーツを再びぎゅっと握って快感に耐えてる後姿。
2人のリズムでベッドが壊れるんじゃないかと思うくらいに、
強く、強く、腰を打ちつける。

「あ、あ、あ、っ、とおるさ、あ、っ…!!!!」
「いって、イきなよ…俺も……も……っ…あっ………!!!」

身体からずるっと力が抜け、名の背中に倒れ込む。
その背をぎゅっと抱きしめる。

名の方もぐったりと体重をベッドに預け、
やがて二人分の体重を支えられなくなった腕が崩れ、
二人して床に倒れ込んだ。

「はぁ…はぁ…」
「はぁ…ん…っ…はぁ…」

部屋を綺麗にしている名のお陰でどこもけがはない。
床に打った肘だけがすっげー痛くて現実味があった。
それ以外は幸福感と倦怠感に満たされて、夢かうつつかよくわからない。

ただ、幸せだった。

「もぉ!透さん…急に…」
「仕方ないじゃん…名が可愛いことばっか…言うから…」
「…………」
「CDの発売も嬉しいし、名がいつも傍に居て応援してくれてることも嬉しくて…なんか…おかしくなっちゃった」

この気持ちが伝わるだろうか。
俺は名がいるから、こうして歌って、踊ってられる。

全部、お前に届けたいから。
全部、お前の笑顔が見たいから。

きっと、全部、お前のためだし、お前のおかげ。
それに、俺がおかしくなるのは、全部、お前のせい。

「…ねぇ」
「なに?透さん」
「好き」
「………私も」
「へへっ…」
「ふふっ…」

半裸っつーみっともない格好で二人床に転がりながら、
ふんわり笑う、こんな時間が好き。

こんな時間は名とだけだから。

「でもやっぱポスターは外して欲しいなー。なんか…ヤりづらい」
「……えー…」
「あ、やっぱ見られてシたいわけ?」
「外しておきます」
「ふっ…」

即答した名の真剣な表情に思わず噴き出す。
つられて、神妙な顔つきだった名も笑った。

二人で作れるこんな時間が好き。

お前とのことは、全部好き。
だから、これからもずっとそばに居て。

歌うよ、お前の為に。


2014.3.31

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