焦らした罰(透・裏/Birthday)
「…で?一体何日過ぎたと思ってんの?」
「……ハイ。申し訳御座いません」
「気持ちこもってない」
「うぅ…」
名の家。
久々にゆっくり家デートで嬉しい。
……なぁんて素直な感情よりも、不満が身体を満たしてる。
壁に掛けてあるカレンダーはもう11月。
「November」の文字の周りは紅葉した木々のイラストで飾られている。
「ハーイ、問題です。俺のたんじょーびはいつでしょー?」
「……10月」
「の?」
「23日…です」
「せーかい」
わかってんじゃん。
覚えてんじゃん。
そりゃあね、
俺の為にケーキ作ってくれたよ。
期待通りのあまったるいカオリするでっかいハコ持って、
期待通りそわそわしながら、のこのこやってきたお前見て、
嬉しくなかったわけない。
でも誕生日ケーキって他のメンバーにもあげてたじゃん?
彼女、なんだし…俺だけの”トクベツ”欲しいじゃん。
で、いつ言いだすのかなーって待ってた。
誕生日の3日前、2日前、前日……ついに迎えた当日。
特に何も言いださない。
そして誕生日は過ぎ、1日、2日…経っていく。
薄れていく特別感。
期待通りのとびっきりの笑顔で、
期待通りそわそわしながら、
「2人で誕生日のお祝いしたいな」なんて台詞を、オーダーとりにきたときでもいい、
なんなら電話越しでもいい、もうメールだっていい、
…欲しかった。
忙しいのは知ってた。
ハロウィンだから、パーティの予約も入ってたみたいだし?
だから2人だけで会える時間を確保するのも難しくて…
気が付いたら11月。街はハロウィンのお祭り騒ぎから、きらびやかなクリスマスのイルミネーション。
俺の未消化の誕生日を華麗にスルーして。
名との特別な誕生日を夢見てた俺ってバカ?状態。
んで、ようやく重なった2人のオフ。
夜、家に来て欲しいっていうから一体どんな詫びが待ってるのかなーって思って部屋入ったら、
案の定、並んだ豪華なご馳走。随分と準備に時間が掛かっていそうなものばかりだ。
「お誕生日過ぎちゃったけど、お誕生日メニューのつもりで作ったの…ごめんね」
あいつは申し訳なさそうに眉根を顰める。
「どうかな?」
なんてこっちの顔色窺ってくる。
そんな風な表情されたらさ、どうしたらいいじゃわかんないじゃん。
お前のせいじゃないってわかってるから尚更。
恋人同士ってさ、
誕生日になる前、学校とか仕事終わりに二人で会って、
0時になるちょっと前に灯かり消して、
一緒に肩寄せ合ってカウントダウンとかしちゃってさ、
0時になったと同時にバースデーケーキのろうそく吹き消す…とかそういうのしないの?
てか、そういうの思い描いてたの俺だけ?
「……ハァ」
「あっ、ごめん、嫌いなモノあった?なるべく甘さ控えめ、ピリ辛多めなんだけど…」
料理でひしめくテーブルを見て、席に着く。
俺の態度を見てひやひやししている様子の名も同じように席に着いた。
「…いただきます」
「は、はいっ、召し上がれ」
イジメるのはまず料理を平らげてからにしよう。
目の前に並んでいるのは自分の為に作ってくれた料理の数々。
レストランじゃ見掛けないメニューばかりだし。
温かいうちに食べなきゃ罰があたる。
……俺も、少しは大人になった?
X.I.P.としてデビューして、すぐ名と出会って、
それから色んな仕事してきた。
ときに全部めんどくさくなって投げ出したくなるときだってあるけど、どうにかやってこられてる。
そういうとこは大人になったかなって思うけど、
こいつが関わると全然ダメ。
俺、すげーこども。
みっともない嫉妬で困らせたくなるし、
散々甘やかしてほしかったりする。
お前の居場所になりたいとか、そういうでかいこと全然言えない。
困らせて、甘えてばっか。
そんな俺を受け入れてくれる名が好きでたまらなくて…だからまた意地悪したくなっちゃって…。
レストラン任されたお前が、すっげー頑張ってるのよーく知ってる。
誰より傍で見てるんだからトーゼン。
だけど、誕生日くらい我侭いってもいいよな?
*
後片付けも自分がやるからいいよ、と言ってくれた彼女を制してソファで座っているように言う。
皿を洗う俺の感情を読み取ろうと、背中を這う視線に気づかないふりをして、
乗っていた料理が綺麗になくなった皿たちを丁寧に洗う。
キュ…。
蛇口をしめて、手についた水を拭うと彼女の座るソファへと歩み寄り、その隣に腰かけた。
「透さん、ありがとう。ごめんね」
彼女は持っていた雑誌をテーブルに置き、「何か飲む?」と立ち上がりかける。
「ストップ。はい、座るように」
「…はい」
その手を掴んでソファへ引き戻す。
ぽすん、と音を立てて彼女は再びソファへ沈む。
身体ごと彼女の方を向き直し、軽く首を傾け、目を細める。
かなりコワイ表情になってるはず。
彼女の表情が不安げに曇った。
「…で?一体何日過ぎたと思ってんの?」
「……ハイ。申し訳御座いません」
「気持ちこもってない」
「うぅ…」
「別に怒ってるって言ってないじゃん」
「…怒ってるもん……」
「へぇー自覚あるんだ」
「だからごめんって……っ」
「ん…」
反論しようとする彼女の後頭部に手をまわして引き寄せ、唇を重ねる。
そのままぐいぐいと体重を掛けて、彼女を押し倒した。
ソファに広がる髪。
彼女に落ちる俺の影。
「じゃあ今日は全身で俺をもてなすよーに」
「は、はい!?」
「お前を猫にするのもいいけど…誕生日っつーことで趣向変えて、俺が猫」
「へ!?」
ああ、やばい。
困惑した表情で見上げられるのぐっとくる…
触れる肌は柔らかくて、甘く噛んだらどんな声あげるんだろうとか、
噛み跡つけたら怒るだろうかとか、
やわらけーとこ全部舌を這わせたいとかそんなことばっか考えて…
「抑え…きかね…」
彼女が何か言う前にもう1度唇を貪る。
今度は俺が圧倒的優位な体勢だから、抵抗なんてさせない。
「む……ぁ…ふ……」
「んっ…ふぁ……っ」
気の済むまで存分に口内を弄った後、上唇を軽く噛んでから解放してやる。
呼吸を奪われたからか、潤んだ瞳がまたそそる。
「苦しかった?」
「ら、って…突、然で……」
「でも俺、猫だからそーゆーのわかんないし?」
「…へ?」
「ほら、猫なんだから相応のもてなしをするよーに」
言った俺は彼女の胸元に鼻を擦り寄せ、甘えてみせる。
白いシルクのブラウスを着た彼女は、肌以外も手触り良好。
少しそうしてると、名は察したのか、俺の頭を優しく撫で始める。
気を良くした俺は目を細めて、その柔らかい手のひらに酔いしれる。
あー。気持ちいいー。
俺が気持ちよさそうにしているのに満足したのか、彼女はなおも丁寧に頭を撫でてくれる。
んー、そろそろ違う刺激が欲しいところ。
「なぁ」
「ん?」
「しゅるしゅる、って俺が言ったの覚えてる?」
「あ、うん、猫はしゅるしゅるできるって…」
「そ。それ」
俺は目の前にある彼女の柔らかな胸に乗った赤いリボンに唇を寄せて、歯で挟み込む。
そして少し顔をずらして、彼女と目を合わせる。
「こういうこと」
…ってうまく言えたかわかんないけど、リボンに噛みついたまま、それを少しずつ引っ張る。
見つめ合う彼女の視線が少し怯えたように揺れて、俺の欲望にまた火を付ける。
やがて、ちょうちょ結びになっていたリボンはするりと解け、胸元が少し露わになる。
そこ目掛けて唇を押し付け、強く吸うと、彼女が小さく声を上げた。
「ぁっ…や…」
「…んっ……感じた?」
「ち、ちがっ!きゅ、急だったから」
「へぇー。急にヤると、どこでも感じるんだ?」
強がる彼女に意地悪したい気持ちが膨れ上がってくる。
間髪入れずに胸元のリボンを全て解き、衣服を寛げる。
名が声を上げたがお構いなし。
下に着ていたキャミとブラジャーを思い切り片手でずり上げると、
押し込まれていた白い膨らみが揺れて零れる。
高まる気持ちに我を忘れそうになるも、ぐっとこらえて、
先程解いたリボンを再び結んで前を閉めた。
ちらりと名を見やると、いつもと違う下着の位置に窮屈そうな表情をしていたが、
なんとなくそうしたかったから続けることにした。
そうか、これって、素肌にシャツ。ってヤツ。
「想像してたよりもイイかも…」
目の前にあって今まで触れなかった柔らかな双つの膨らみを服の上から刺激する。
片方は服の上から舌を這わせ、片方は手で強く掴む。
「んっ…!」
「はぁ…やわらか……マシュマロ…?甘いの嫌いだけど、お前のは好き…ん…っ」
「お前の、ってなんか…言い方…ヘンっ…ん、ゃ…」
服の上から舌でなぞった場所がべたべたになってくる。
それでも構わず嬲り続ける。
相手は素肌にシャツなんて扇情的な格好なのに、自分の衣服はひとつも乱れてない。
凄く野蛮なことしてる気がして、自分が本当に動物になったみたいな気分。
ヘンな昂揚感。
「お、硬くなってきた、ここ、わかる?」
「言わないでっ……恥ずかしい…っ」
「恥ずかしーことしてんだから当たり前。ねぇ、きもちい?」
「透、さ…やっ…ぁっ……んっ……」
「ねぇ?我慢、しないでよ…気持ちイイって言ってくれないとやめないよ?」
膨らみの中心が硬く立ち上がってきたところで、そこを甘く噛んでやると、彼女の腰が跳ねあがる。
既に絡んだ足と腰で難なくそれを抑えつけて、笑みを浮かべると、俺を見る彼女の目が見開かれた。
気を良くして2,3度がりがりと硬くなったそこに歯を当てると、今度は腰が動かないからか、顔を左右にいやいやと振る。
涙の滲んだ表情が堪らない。
「んっ……き、きもちい……いから…やめ……」
観念したのか、そう声を絞り出すと、はぁはぁと息を乱す。
歯を離し、再び舌でぺろぺろと慈しむように撫でてやると、今度はふぅっと息を吐く。
「俺、猫だからさ」
「っ……え?」
「人間の言葉、わっかんなーい」
「え、えぇ!?」
「にゃーで答えろよ。なぁ?きもちいーの?やめてほしーの?」
胸元から彼女の顔を見上げながら、今度はもう片方の膨らみへと口を滑らせる。
ちゅっと吸いつくと、再び彼女が背を撓らせた。
「んっ…!!」
「ちゅ…ん……ほら……こっちなんて舐める前から硬くしてやんの」
「だって、透さ、んが、触っ…やっ…ん」
「こんなに主張して、吸ってっていうならそうしてあげないとなー」
ちゅ…
「ん……っ…ん……ふ」
時折鼻を鳴らしながら、吐息を肌に滑らせるようにそこを執拗に攻める。
俺の頭に置かれた名の両手が小刻みに動く。
動きを止めようとしてそこに置いたんだろうけど、髪に絡まる指ひとつひとつが俺の舌の動きに合わせてぴくりぴくりと動くから、全身で感じてるんだって伝えてくれてるみたいで嬉しくなってくる。
いつまで経っても望む言葉を言わないから、こっちも甘く噛んでやる。
「あっ…!!」
それから少し歯に力を込める。
「…いっ…!!」
硬くなったそこを歯で挟みながら舌で嬲ると、足がばたばたと動いた。
それでも構わず続けると頭上から、大きく息を吸う音がした。
「透、しゃ……ん…」
「はーい?」
「に……にゃー…ぁんっ!あっ……に、にゃあん…」
嬲っていたそこを解放して、彼女の顔を見ると、涙ぐんだまま天井を見上げている。
「……不合格」
「…えぇ!?」
「俺の目を見て言うように」
「………っ…」
「もう1回チャンスやる」
「………?」
「俺、もうダメ…。お前可愛すぎて限界……いいでしょ?」
彼女は何も言わなかったけれど、身体から力を抜いた気配がした。
俺は1秒も彼女と離れてるのが嫌で、勢い任せに服を脱ぐ。
冷えた空気が肌に触れたが気にしてられなかったし、ふたりの熱ですぐあったかくなるのがわかってたから、再びすぐに彼女に覆いかぶさる。
彼女の身体に張り付いたシャツも脱がせ、たくし上げてたキャミとブラも腕を通して脱がせると、白い肌が目の前に広がった。
急に脱がされたから寒かったのか、俺の下で小さく震える彼女は本当に猫みたいで、またぐっとクるわけで。
震える肌を、つ、と人差し指でなぞるとその場所から粟立っていく。
鎖骨から谷間へ、谷間から腹へと、優しくでも時折爪で引っかくように線を描き、下腹部へと進む。
淡い茂みを撫で、潜り込もうとすると指が滑る。
これって…
「すげー」
「っ……」
彼女は両手で顔を覆う。
腕の角度のせいで胸が寄って谷間ができる。
あー、そこにも滑り込みたい。
でもいまはコッチ。
「とろとろに溢れてんじゃん…かーわいい」
「ち、ちが…」
「違わない。なに?恥ずかしいことされて感じちゃった?こんなに熱くして」
「い、いじわる……」
「へーへー意地悪ですよー」
「っ……開き直った…」
「俺を意地悪くさせるのはお前が悪い。俺をこんな気持ちにさせるのもお前が悪い。全部全部お前のせいだ」
「そんなっ」
「異議は認めない」
「そんなっ……うっ…ん……」
くちゅ、と埋めた指を動かすと、彼女は口を噤む。
指が滑ってうまく動かせなくて、それがもどかしくて愛しい。
「こんなにしてんなら、綺麗にしてやるよ」
「…えっ…?」
身を起して彼女の足元へと身体を動かす。
2本の足を掴んで開こうとしたとき、俺の意図がわかったのか物凄い勢いで足に力を入れそれを阻んでくる。
「無駄な抵抗はやめとけ」
「だって、恥ずかしっ……い…」
「拒否するならもっと恥ずかしいことさせるけどそれでもいいなら?」
「……う、うぅ……」
観念したのか、足をそっと開く。
ま、拒否しなくても恥ずかしいことさせるけどねー。
開いたそこ、中心部へと舌を伸ばす。
あんまりしたことないから、すっげー恥ずかしいんだろう。
押し殺した、泣き声にも似た声が聞こえてくる。
ぺちゃ…ぺちゃ…
わざと音を立てるように、溢れてくるものを掬いとって弾いてから舐め取る。
まるで猫がミルクを飲むみたいに。
ただ舐めていくだけじゃつまらないから、
中心の少し上、ぷっくりと膨れた小さな粒を探り当てて、ぐっと押しつぶすと、抑えきれない声が零れ出す。
「ひぁっ……だめ、やだっ…さわっちゃ……や…んっ……」
「声、出せっつーの…んっ……ふ……」
ぺちゃ…ぺちゃ…
ぐりぐりとそこに刺激を加えつつ、もっと奥へと舌を滑り込ませると、腰が大きく震える。
「と、るさ……あっ……も……や……」
「イきなよ」
「あっ…んっ!!!」
どっと溢れだした体液はもうぐちゃぐちゃになってた俺の顔を更に濡らす。
あー、もー、このどーにでもなれ感たまんねぇ。
彼女の香りが満ちるそこから離れるのは惜しかったけど、泣きじゃくるお前を放っておけない。
そこから顔を離し、顔を軽く拭って体を起こし、再び彼女と顔をくっ付けあう。
「ゴチソーサマ」
「はぁ……ん……はぁ…はぁ…」
汗と涙でぐちゃぐちゃになったお前の顔は俺の顔と大差なかった。
ただ、羞恥心と背徳感に染まった表情にゾクゾクして俺は思わず舌舐めずりする。
「イッちゃった?舐められて?」
「だ、って……なんかヘン…体熱くて、とまらなくて…」
よほど恥ずかしかったのだろう。眉根を顰めて自分の感情と闘っている彼女。
落ちつかせるように髪を撫でると、気持ちよさそうに目を細める。
しばらくそうしていてやるとその間に息を整え、安心できたのか小さく笑う。
火照った白い肌に滲んだ汗を舌で拭うと、彼女は両手で俺の頭を抱いた。
「はぁ……あったかい……」
ちょっと…ムードとか…こう、ここはガッと行くとこだから身を任せてほしいんだけど…
なんて頭ん中で悪態つきながらも、抱きとめられた胸は彼女の香りでいっぱいで、ガッ!と行く勢いを挫かれそうになる。
「だーめ」
俺の頭の後ろにまわされた2本の腕を引きはがして、ソファに縫いとめる。
その手にぐっと力を入れ、冷やかな瞳で見下ろすと、彼女は途端に狩られる獲物の瞳に変わる。
「散々焦らされたからな」
「……ごめんなさい…」
「言い訳する元気もなくなるくらいシてやる」
「えっ……?」
「ひっでぇ面して泣いて喚いて、ごめんなさいしか言えなくなるくらい」
「…えぇっ……」
「それとも、人間の言葉さえ忘れて、にゃーにゃーしか言えなくなるまで、がいい?」
「………じゃ、じゃあ…そ、その前に」
「なーに」
「お誕生日おめでとう、透さん。生まれてきてくれてありがとう。…好き……です」
「!!」
急な言葉に顔がバッと赤くなるのを感じる。
「にゃーにゃーしか言えなくなったら、おめでとうって言えなくなっちゃうから」なんて消え入りそうな声で言う名が愛おしすぎて本当にそうしてしまいそうな自分がいる。
「へへっ…サンキュー。じゃー、思う存分、お前を戴いてやることにする」
「よ、宜しくお願いします…っ」
「なにそれ、バカ?」
不意打ちでキスをひとつ。
「いくよ」
時にどうしようもなく甘えたくて、
時にどうしようもなく苛めたい。
時にどうしようもなく頼りたくて、
時にどうしようもなく守りたい。
そう思えるのはお前だけだから。
これからもずっと傍にいるよーに。
2013.11.17(up後1度加筆しました(11/17)
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