ときレス | ナノ


Sweet my Candy(音羽/微裏)

「気持ちいいね」
「うん、気持ちいいねー」

今日は久々のオフ。
彼女も休みを合わせてくれたので、彼女の家でのんびりしてる。
ソファにもたれてふたり。何をするでもなくぼんやりと見つめるのはテレビ。

デートで結構外に出たりしてたんだけど、最近事務所から注意されることが多くて。
僕は全然気にならないのにな、って彼女に言ったら、彼女は「事務所の言う通りです!」てちょっと怒ってた。
どうやら、僕が外でスキンシップをはかろうとするのが困るみたい。

好きだから、触れたいって思うし、キスしたいって思うし、勿論その先だって…。
そう思うんだけどな、って言ったら、場所が問題なんだって言ってきたので、

「じゃあー、おうち行きたいな?」

と、頼んでみたら、それはそれで慌てふためくものだから面白い。
結局僕の要求を飲んだ彼女は、今日のデートの為に色々買いそろえてくれたみたい。
さっき、真新しい水色のスリッパ履いたんだ。
3Majestyでの僕の色を覚えててくれたみたいで、ちょっと嬉しい。ううん、とても嬉しい。

「あっ、ねぇねぇ、僕のパジャマどんなの?それも水色?」
「ぱっ、ぱじゃま!?」
「あれ?だって泊まる気だし」
「え、えぇっ!?」
「まぁ、名が構わないなら裸でも僕は…」
「あっ、いや…は、裸!?」

こういう反応がいちいち面白いからからかいたくなっちゃうよね。
隣で百面相する彼女を見ていたら、ふとポケットに飴が入っているのを思い出す。
寄った薬局でおばちゃんがくれたんだ。

「飴みっけ。食べる?」
「ううん、大丈夫。慎之介さん食べて?」
僕の手のひらにのった小さな袋を見つめたが、すぐにテレビに視線を戻した彼女は言った。
「………」
ちょっと考えてから、袋をやぶって、それを口に入れる。

広がる爽やかなレモンの味。
もう少しでお昼だから、少しお腹すいてたんだよね。

ぎゅるー…

「あっ」
「んっ?」
隣の名が恥ずかしそうにお腹を押さえてから、恐る恐る僕の方を見る。
「き、聞こえた?」
「うん」
「恥ずかし…い…」
「お腹すいてるならいいものあげる」
いつか自分の放った台詞と重なる。隣にいる彼女の肩に手をまわして、自分の方へぐっと引き寄せて、唇を少し開く。
中から覗くレモン色の飴。
「いいものって……それ?」
「うん、んっ」

チョコレートだったときとは違う。もっと小さいそれ。
いくらテクニシャンなきみでも奪えないでしょ。

「む、無理です…!!!」
「ん」
「し、慎之介さん!!」
「んーっ」
「っ!」

我慢の限界がきて、引き寄せていた頭をもっと自分の方へ近づけ、その口に飴を押し付ける。
飴越しのキス。
ファーストキスはレモン味だなんて聞いたことあるけど、きみとのキスはもっと甘い。
甘くて甘くてもっともっと食べたいって思うんだ。

舌を絡ませて、彼女の口内に入った飴を弄ぶ。小さいから、すぐどこかいっちゃう。
舌の裏側、歯列の外側、至る所を舌でなぞると、身体がだんだん熱くなってきて、幸せな気持ちになる。
息苦しいだけじゃない、彼女と繋がってるって実感できるから。

すごくしあわせ。

「んっ」
「あっ」

存分に彼女を味わってから唇を離すと、唇付近にいたらしい飴がぽとりとこぼれおちる。
そして、彼女の鎖骨部分で1度跳ね、胸の間に滑り落ちていく。

「だめ…」
「っあ」

飴を追いかけるように、慌てて彼女の胸の間に顔を埋めると、彼女が甘い声を出すものだから、ずるい。
とまらなくなっちゃうよ。

飴が滑り落ちていったラインはずっと甘くて舌を尖らせて撫でると、彼女が苦しそうな声を出す。

「しん、のす…けさんっ、あっ」
「あまいよ…とっても…美味しい」
「んっ」
「ねぇ、もっと食べたいな?きみのこと」

潤んだ瞳。唇噛みしめても、僕の言葉を拒否や否定することはしない。
照れて頷けないその表情にまたそそられる。

そのままソファにゆっくり押し倒す。
力なく倒れる彼女をこれからゆっくり愛することができるなんてたまらないよ。

性急だって笑う?
それでもいい。
だってきみとずっとひとつになりたいって思ってたから。

わずかな期待を込めて薬局に寄ったのも、あれを買うためで。
そのおまけにもらった飴がこんなところで役立つなんて思わなかった。

「可愛い」
耳元で囁くと、ぴくりと肩を震わせる。
どこから愛そうか。
幸せな昼下がり。甘いきみを。さぁて。

「いただきます」


130522


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