ペルソナ4&3 | ナノ


  ジュネスにて(陽介)


「記憶喪失なんだって?」

ジュネスのフードコート。
今日は日曜日だから、学校はない。
翌日から悠と同じ高校「八十神高校」に通うことになっている私は、必要なものを買いそろえようという悠の提案で、彼に案内されてやってきた。

紹介された男の子-花村陽介-は、このジュネスというショッピングセンターの御曹司らしい。

いまもエプロンをつけているところを見ると、アルバイト中だったのだろうか?

少し前に都会から引っ越してきたとか。
他所からこの街に入ったという点で、自分と同じだから、少しだけ彼が身近に感じる。

「はい…」
悠は見るものがある、とかで、花村君と二人にされてしまった。
テーブルを挟んで向かい同士に座っている。
休日のフードコートは人が溢れている。いろんな声が飛び交っていた。

「ちょっと、ちょっと〜!同い年なんだし、気を遣わないでさ!」
元気づけてくれようとしているのか、大ぶりなジェスチャーと共に笑顔を振りまく。

「う、うん」
「俺のことも、陽介、って呼んでよ」
「よ、よ…よう…」
軽い感じの男の子だと思ったが、その第一印象は当たりみたいだな、
なんて思いながらも、速くなる鼓動。

「陽介。はい、リピートアフターミー」

「よ、ようすけ…?」

「うん、なぁに?」
テーブル越しに、彼が首を傾げる。

「え、えっと…」
復唱しろと言われたから復唱したのに、問いを投げられて混乱する。

「ハハッ、名って可愛い」

陽介は妖しげに笑う。

「…はっ!?」
「おい、陽介。さっそくナンパか?」

突然ガタっと、椅子が引かれ、隣に悠が腰掛ける。

「なんだよ、鳴上。空気読めってーの」

「うちのお客さんだ。俺が守るのは当然」
悠は涼しい顔でこっちを見てくる。

「ここに来てくれてるんだから、俺んちのお客様でもあるぜ?なんなら、鳴上んちやめて、うち来る?」

「お前のとこにはクマがいるだろう」

「あ、クマにも会わせてやりてぇな」
陽介はフードコートを見渡したが、「う〜」と唸っただけだった。

「クマ吉、さぼってんな……」

「じゃ、俺達そろそろ行く」
悠は私の肩をそっと叩く。
私は頷いて立ち上がった。

「おう。また明日な!」

PPPPPPP……

陽介と別れようとした瞬間、悠の携帯が鳴る。
彼は通話を始めた。

彼を眼の端にとらえつつ、
陽介がこちらに一歩踏み出す。

「俺、本気になっちゃうかも」

陽介が私を見つめて、小さく呟いた。
周りの喧騒に、鼓動が溶けてしまいそうだった。



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