ペルソナ4&3 | ナノ


  傾かざる天秤/後篇



「先輩……あっ!」

突然胸の膨らみを鷲掴みにされ、身体に電流が走る。
背中がしなり、足がばたつく。床を蹴っても蹴っても、足はすべるばかり。

その両手を乱暴に揺らされ、彼の手の中で柔らかなそれが幾度も形を変える。
気持ち良くなんてない、痛みだけが感覚を支配する。

「先輩、やだ!痛い……痛いです…!」
「大丈夫、気持ち良くなる」

はぁ、はぁ、と息を乱しながら、彼は力任せに乳房を潰そうとする。少しだけ自由になった両手で彼の両手首を掴んで、抵抗を試みるも、ちっとも動かない。

彼はやがて私の着ていた服をまくりあげ、ブラを引きずり上げる。
外気にさらされた両胸を再び掴んだ彼は、真ん中に在る飾りを2本の指で挟み込みながら、ぐりぐりと刺激を加えてくる。

「やっ、んあああっ、いっ、いたい、はっ…あっ」
「名…!!!」
私の名前を呼び、そこにむしゃぶりついてくる。
ちゅぱちゅぱという音が響く中、熱い舌が肌を這う。

粟立つ感覚。

「んやああっ…!せん、ぱいっ!はぁっ、ぁああ」
「名!!!…はぁっ、んっ……名…!!!」
唾液でべたべたになったそこを見て満足したのか、
一通り弄んだ彼は、動きを止め、見つめてくる。

「そうか。…胸だけじゃ不満か。そうだよな」
私の拒絶の言葉が気に入らないようで、そんな言葉を吐き捨てる。

悪かったよ、
先輩は嘲笑を浮かべながらそう言うと、上体を起こし、突然スカートの中に手を入れ、下着を取り去る。既に湿り気を帯びたそこに、彼の指が入り込んできて、
私は身体を震わせる。
「あっ……はぁ…っ……んぅ……」
くちゅくちゅと、耳を塞ぎたくなるような水の音が響き渡る。
はは、と先輩は笑った。

「身体は正直だな?どんどん指が入っていくよ……ここか?」
ぐっ、とある個所を強く撫でられ、意識が飛びそうになる。

「あぁっ!」
「っと…気絶しちゃ困るな、お前の困った顔が見たいんだ」

彼は言いながら、指を動かす速度を速めて行く。
思考なんて追いつかないくらい気持ちよくて、自分のはしたなさに嫌気がさす。涙で滲んだ彼の顔は笑っているようにも見えて、恐怖が増す。

掴むもののない私の手は、声を抑える為に口元へ向かう。
ぎゅっと口を押さえつけると、息ができなくなって、それが更に切迫した状況を作り出していた。

両目もぎゅうっと瞑ったまま、快楽の波に流されないように耐える。だが、声は相変わらず漏れ続け、彼の動きは止まらない。

と、突然、彼の指が引き抜かれ、大きく足が開かれる。
次の瞬間。

指とは比べ物にならないものが侵入してきた。ぐちゃぐちゃになったそこはすんなりと彼を受け入れ、包み込もうとしている。

「あっ、やっ、やあああっ!ああ…」
「気持ちっ、いい、だろ?俺の形、覚えろよ、ほら、くぅっ……ほらっ!」
「やっ、やっあっ、っあっ、んああああ」

力任せに腰を打ちつけてくる先輩の勢いはすさまじく、少しでも気を抜いたら意識がなくなってしまいそうだった。
部屋に私の悲鳴のようなあえぎ声と、先輩の小さく、でも荒い息遣いが満ちる。

「あっ、あっ、やっ、やだっ!先輩、や、やめてっくださっ…あっ」
「俺のことっ、好きなんだろ?」
「あっ、…んあっ……!やっ!」
「好きだろ?好きなんだろ?ほら、好きだって…っ、言え、よ、言えっ、…んっ…言ってくれよ!」
「好きっ、好きっ、ああっ、好きっ、です…」

嬌声が漏れるたびに、質量を増す、中にいる彼。ぐっ、ぐっ、と体重を掛けられるたびに、息が詰まって、声を出さないと、窒息してしまいそう。

「だろ?お前にはっ、はっ……俺しかっ、はぁ、いないん、だっ…!」
打ちつけられる腰の動きが速くなり、思考も声も追いつかなくなる。
ノドがからからに乾いて、嬌声がもう悲痛な叫び声のようだ。

「お前には、な?…おれっ、しか、いないんだ…はぁ…俺には、お前しかっ…くっ…いない、ように…くっ…あ…!」

その想いをぶつけるように、彼が大きく私を穿つ。刹那、私は抑えきれなくなった甲高い声を上げ、意識を失った----。


***


目を覚ますと、
すっかり身なりは整えられており、
ベッドへと横たえられていた。

ズキ、と痛む腰、ノド、そして頭。
乾いた口内。

そろりと身を起こすのと同時に、ドアが開き、真田先輩が部屋に入ってきた。持っているトレイには湯気のあがるカップが2つ乗せられていた。
彼の表情はどこか気まずそうで、視線があっても、すぐに逸らされる。

私もなんて声を掛けていいかわからずに、彼の言葉を待った。

「あの……その………」
トレイをデスクに置きながら、小さい声を発する先輩。
「悪かった……二人の初めてがあんな形で…」
こちらに顔を向けない。うなだれ、床を見つめている。
「怖かったんだ……憧れていたお前…ようやく手にしたお前を、他の男に奪われるのが…」
「せん…ぱい……」

さっきまでの大胆な態度とは違う、臆病な姿に、胸が締め付けられる。真田先輩を好きな気持ちはきっと本当。

彼は現実を生きる人。
共に闘う仲間。

もう一人の彼は、時の狭間を旅する人。
支えてくれる人。

「美しき悪魔、という呼び名は本当だな」
「……え?」

「お前は俺を誘惑する悪魔だ……お前になら喜んで殺されよう」
先輩は自嘲気味にそう笑うと、
カップをひとつ渡してくる。

「あり…がとうございます…」
「例えお前の心に他の男が入り込んでいたとしても、俺はお前を諦めるつもりはないからな」
「…………先輩…」
「名」

ぎゅっ、と抱きしめられ、彼の鼓動の速さが伝わってくる。
乱暴にしたことを悔いているのだろうか…?

「ごめん……好きだ。お前が好きで好きで、日に日に俺はおかしくなる……」
「先輩……私も、好きです」

心からなのか、先輩を安心させるための口先だけの言葉なのか、疲労に喘ぐ私の思考は、もう考えるのを止めていた。

「よかった…!」

更に強く抱きしめられる。
この部屋の中で、彼の体温だけは本物なのだと、そう感じた。


* END *


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