夢/うたプリ | ナノ


  壁を壊して(翔)


-Side 翔-


“恋をするのはいけないことか”

そう問い詰めたらお前は慌てる。

「悪いことじゃないよ!全然!」
「じゃあいいじゃねぇか。迷うことない」
壁際にじりじりと追い詰めて、上から見下ろ…したいところだけど、
身長差があまりなくて、目線は同じ高さ。

まっすぐ、お前を見つめる。
気まずそうに目をそらして、お前は唇を噛んだ。

「だめだよ!だって翔ちゃんはアイドルだし…」
「…年下だから?」
「それは関係ない!」
「ホントかよ。アイドルは恋愛禁止、っつーのはまだわかるけど…年齢の事気にしてんじゃねぇの?」
「そういう翔ちゃんが気にしてるんじゃないの?」

あ。

しまった、と言わんばかりに、お前は口に手をあてる。

そうか。
年齢を気にしてるのは俺だ。

少し年上のお前に、永遠に追いつくことのできない年齢。
生きた時間。
俺より先に生まれたお前は、当然俺よりたくさんのことを経験してるわけで…。

掴めないお前の心を、歳のせいにしてるところがあった。

俺は怖いんだ。
“年齢”という壁が。

いつまでも年下扱いされることが。

「どうしたら、気にならない?」
お前は自分の発言をわびるような表情で俺の瞳を覗きこんだ。

「……付き合ってくれたら」
「そ、それは…」
「年下だからって、甘く見るなよ」
「…へ?」
「たぶんお前が考えてるより、ずっと俺は大人だ」
「…どうして?」
「今すぐお前にキスしたいって思ってるから」

覗きこんでくる瞳を捕らえるように見つめて、そのまま顔を近づける。
一瞬怯えたような、驚いた表情をしたが、逃げない。

「……私も思ってる」
「な!」
「…って言ったらどうする?」

くすくすと笑うお前。
悔しいから、お前の頭の後ろに手をまわして引き寄せ、思いっきり唇を押しつけた。

あまりにも勢いを付け過ぎて、歯と歯がぶつかった感触がしたが、気にしない。
自分の想いをそのまま伝えるように。
願いが叶うように、ぐっと、深く、口づけた。


130320

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