ナマモノ | ナノ



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どうでもいいけど、何でアシュリー?
危ないよ、こんな所に、と朦朧とした頭で思うが、理由を探すまでには至らない。
何が起こっているのかわからない…いや、わかるか。
よくある人質云々のやり取りをしているのだろう。

悲劇のプリンセスには、なりたくない

ぐい、と側頭部が強く押され、目の前のレオンたちが銃を捨てたのが見えた。
その銃を此方側に蹴って寄越したことにおっさんは満足したのか、銃を私から少しだけ離す。
そして、何の取引をしたのかわからないが、私を立たせて、数歩歩いてから、押した。
勿論、歩けるはずなんてなくて、その場で倒れかける。
が、がしり、と抱きとめられ、視線だけを動かした。

「ヒサメ、聞こえるか、」

抱きとめてくれたレオンの声に頷いて、ジルがおっさんの方へ向かう。
…あのさ、まさかと思うけど、人質交換的な何かじゃないよね?
なんて思いながら、レオンに囁く。

「レオン、銃、あるよ。」
「?!」

驚いたのが、伝わってきた。
が、それは誰にでもわかってしまう驚き方だよ、レオン。
案の定、おっさんが何かを言い始めたが、残念ながら、聞き取れない。
ジルの声がそれに何かを返して、突然、レオンの顔が近くなる。
唇が触れるギリギリの所で、何処だ、と囁かれる。
ああ、伝えやすくするために近づいたのか、と思いながら、左胸当ての内側、と告げれば、眉を寄せるレオン。
少しでも、とりやすくなればいいが、とレオンの肩に右腕を回す。
ちなみに、力は全然入らないのは相変わらずだが、持ち上げるくらいはなんとかできた。
ぐい、と引き寄せられて、何故かキスされる。
レオンの右手が、Tシャツの下に入ってきた。
ちょ、まて、何で舌入れてきてる、なんて、思っても、反抗できる程の力はない。
レオンの手が、胸当ての下に入り、指がデリンジャーに触れる。
そのまま引き抜かれた銃にほっとしながら、いい加減息が苦しい。
ただでさえ、体調不良なのに…なんて思いながら、離された唇を開いたまま呼吸する。
ぎゅう、と、片腕で抱きしめられて、一拍後、振動があった。
それから、何かが倒れる音と、引きつったような恐怖に脅える声。
すぐに視界にジルが入ってきてくれたことで、それはおっさんのものだとわかった。
よかった、と思いながら、ふと気がつく。

「抱きとめてくれたの、レオンで良かった、」

クリス相手でも、同じことになっていただろう状況に私は一人、息を吐いた。

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