IHより…
IHより…
最近、部活が厳しい。
IHも終わって、気が緩む頃だからだろうか?
不思議に思いながらも、その練習を支える。
「氷雨ちゃん!」
「わ、レイナ先輩、どうしたんですか?」
「先輩が来たから、自己紹介して。」
先輩の視線を辿ると優しそうな笑顔を浮かべた背の高い男性。
今大学一年生になった元・キャプテンらしい。
他にも二人、先輩が来ていた。
「は、はい。白雲氷雨と申します。」
「わー、マネージャー入ったんだ…いいなぁ。」
それからは、特に何を話した訳でもなかった。
ただ、レイナ先輩が異常に緊張していて、不思議に思ったが、聞くことは出来ず、いつも通り部活は終わる。
翌日のことだった。
「集合!」
キャプテンの声に全員が集合する。
いつもより真剣な目をしているキャプテンに皆何か起こったのかと静まった。
「文化祭の劇の演目が決まった。」
一年生はぽかんと口を開けたのだが、二、三年生は真剣に頷く。
中には正座までしている人がいて、私たちは話についていけない。
「氷雨ちゃん、何か知ってる?」
「ううん、わかんない、宗くんも?」
話しかけて来た宗くんにそう返して、キャプテンを見る。
レイナ先輩が立ち上がって、一年生に説明してくれた。
「我がバスケ部は文化祭、出し物を2つします、1つは現部員が話し合って準備するもの。もう1つは演劇、別名先輩からの指令です。」
続いた話を要約するとこうだ。
・これは伝統である
・先輩が台本や衣装、音源を用意してくれる
・その代わり、役は決められている
・女装者が勿論、当たり前のように出てくる
・特に一年生は覚悟しておきなさい
・当日の発表は先輩が見にくる
・無様なものを見せたら、死を覚悟しなさい
(※つまり、練習が倍になります)
うわぁ…大変だぁ、なんて思っていたら、レイナ先輩にマネージャーも参加だからね、と笑顔を向けられた。
キャプテンが一度咳払いして、注目を集める。
「これから題目、配役を発表する!」
ごくり、何処からともなくそんな音が聞こえた。
緊張が全員を包む。
「劇は『茨姫』…わからないやつはいないな?では、次、配役だ。」
ドキドキと心臓がなる。
ふと、隣の宗くんを見ると、彼は真剣な表情をしている。
他の子たちも、息を殺して、キャプテンを見つめる。
「まず、ヒロイン、塚本レイナ。」
「っ?!氷雨ちゃんじゃないの!?」
「ちょ、先輩、私を売る気だったんですか?!」
思わず叫んでしまった。
キャプテンはにこり、と笑う。
「王子は俺だ、安心しろ。」
うわぁ…という声が何処からともなく聞こえた。
まあ、いいんじゃないかな、リアルカップルだし。
キャプテンは気を取り直して、次の役を発表した。