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お弁当
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お弁当

「仙道、弁当か?」

お昼休みになって、越野が仙道の元を訪れる。
そして、気がついたようにその手元にあるお弁当箱を覗き込んだ。
教室にいる女子の耳が動いた、と越野は感じた。
まだ入学してそれ程立っていないにも拘らず、既に人気がある仙道だ。
彼の所為で、お昼休みの1年2組は女子の数が増えている。
仙道本人は全く興味がないのか、昼食後すぐにバスケをしに向かう。
その事実を知っているのかも危うい…ましてや、自分が原因などと思ってもいないに違いない。

「ああ、スポーツしてるんだから、もっと体に気を使えって。」

今までコンビニか購買のパンだったからさ、と苦笑する仙道にぴくり、と反応する女の子達。
一体誰が、彼に弁当を作ったのか、教室が静まる。
無言の圧力を感じた越野は背中を震わせた。

「誰が作ってくれたんだ?」
「氷雨ちゃん、お隣さんなんだけど…これで三食お世話になることになる、かな?」

にっこり、綺麗に微笑して、仙道は弁当箱を開けた。
それを見て、二人は思わず、驚きの声を上げる。
彼らの目の前には色とりどりのおかずと、それから海苔で作られたバスケットボールの乗っている白いご飯。
とそのボールを追いかける、これまた海苔で作られたデフォルメ仙道。
弁当箱の入っていた布袋には、一枚のカードと小さなタッパーが1つ。

『彰くん
 初めてなので凝ってみました。
 おかずは私のものと一緒です。
 希望があれば言って下さいね。
 デザートもどうぞ。 お隣さん』

カードに書かれていたのはそれだけだった。
小さなタッパーには小さなプラスチックスプーンが貼付けられており、ふたを開ければ、ゼリーがある。
どうやら、缶詰のミカンを使ったもののようだ。

「いただきます。」

と手を合わせて食べ始めた仙道は、かなり嬉しそうだ。
ニコニコ笑って、もぐもぐとよく噛んで食べている。
普段は詰め込むように口に入れてバスケをしに行くので、これも珍しい。
越野はこれくれね?と仙道のおかずの1つを指差した。
仙道は驚いたように瞬いて、に、と笑う。

「だめ。」

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