旦那 | ナノ



051
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長髪の少年が首を傾げた。
後ろにいるその他一年生の皆さんもうんうんと頷く。
ああ、そうか、わかんないのか。

「ついておいで、こっち。」

階段を上がって、ギャラリー。
更衣室の上の部分が広く取られているのだ。
バスケ部員が全員いるので少し狭く感じるものの、それでも十分な広さである。

「好きな所で食べるといいよ。憧れの先輩と食べるもよし、師匠を見つけるもよし、友達同士でもオッケー。」
「氷雨ちゃん、お弁当。」

後ろから声をかけられて、持っていたお弁当を宗くんに手渡す。
彼からもはい、とお弁当が渡された。
…お弁当交換だ。

「神さんと白雲さんって本当に付き合ってないんすか?」
「うん、付き合ってないよ。俺の片想い中。」
「…宗くんはそういうの結構サラッと言うよね。」

だって、押してかないと氷雨ちゃんは意識してくれないでしょ?とは彼の言葉。
目をそらしながら、いや、それは…とだけ返す。

「何で返事しないんすか?」
「返事ねぇ…この機会に聞いてくれる?宗くん。」
「ヤだよ。どうせ、そういうの考えられないからって答えだろ。俺は承諾以外聞かないよ。」
「ま、こういう訳でね。…そういえば、君は紳先輩と対戦したんだっけ?」

ふと思いついたように話を変える。
それから、下でバレー部が準備を始めたのを横目に入れながら、柵側に寄った。
はい、と渡された宗くんのジャージの上着(長袖)。
断っても聞かないことはこの一年でよくわかっているので、ありがとうと受け取って、その上に座る。
どうせ洗濯するの私だし、いいだろう。
長髪の少年が吃驚したような顔をしているが、そこは気にしないでおこう。

「あ、っと、はい、俺は牧さんにお願いしました。」
「凄いよねー、よく言ったと思うもん。」

肩をすくめれば、彼は驚いたように宗くんと私の後ろを見る。
そちらに視線を送れば、噂のその人が。

「あれ?紳先輩も一緒に食べます?」
「ああ、そうさせてもらおう。」

ガチガチに緊張した少年にははっと朗らかに笑って、私の正面に座った。
隣は緊張しきった少年、少年の向かいで私の隣に宗くん。
…この学校内に限っては指定席だ。

「ガチガチだね、少年。」
「周りが先輩だけだからな。」
「ああ、それもそうですね。」

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