旦那 | ナノ



046
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「氷雨ちゃん、」
「な、何かな、宗くん。」
「牧さんの手、放したらどうかな?俺がいるだろ?」
「いや、俺がいるだろって言われても、別に宗くんと付き合ってる訳じゃないし?!」

私が叫んだ瞬間、体育館中から叫び声が聞こえた。
隣で紳先輩まで驚いている。
武藤さんなんて口ぽかんだし、高砂さんですら唖然としている。

「え、何でそんなに驚かれて…?」
「ほっぺにちゅーは友達同士じゃしないだろ…。」
「言っておきますけど、私生まれてから日本で過ごすのと同じ位海外で過ごしてますからね?」
「俺も、長期休暇は海外でしたよ。」

宗くんと二人で首を傾げれば、更にそこでぽかんとした表情に出会う。
それから、私は驚いている高頭先生に声をかけた。

「それに、高頭先生じゃないですか、私に勝ったら命令1つ、負けたら練習のラン1kmずつ追加って言ったの。」
「…ああ、言ったな。」
「そのせいで、宗くんに何度も勝負挑まれてるんですよ?」
「いいじゃん、俺ラン5km増えてるんだから。」
「お前、人にその倍以上命令しておいて何を言ってんだ…!」

思わず、信じられないというように宗くんを見て、それから言わせてもらうけど!と続ける。

「彰くんまで1on1しよう?言ってくるようになって大変なんだからね!」
「…アイツが?」
「そうだよ、まぁ、体力つくし、技術も上がるからいいけど、その分負けてるんだからね、」

それこそ宗くんに負けるのと同じ位、と眉を寄せる。
紳先輩が、ふと、声を上げた。

「なら、俺も命令できるのか?」
「…え、紳先輩も希望者なんですか?」

聞けばにこりと笑い、勿論、と笑う。
嘘だろ、と脱力して背もたれにもたれかかる。
もうヤだ、紳先輩になんて勝てる訳なくね?神奈川ナンバー1でしょ?何考えてるの?
なんて思っても言えない。
その代わりに、にこり、笑って、全員に言う。

「さ、早く続きやりましょう?それから、高頭先生ちょっと。」
「あ、ああ。」

一年生が紳先輩を希望したり、武藤さんを希望したり、宗くんを希望したり、まぁ、様々なうちに高頭先生に近寄る。
先生も話したいことはわかっているのか、無言でこちらを見た。
ふぅ、と息を吐いて、真剣に高頭先生を見る。

「公式戦、もしくは練習試合で30点以上取った場合のみ賭け試合可能って条件にしてもいいですか?」
「30か…だが、リバウンドとアシスト、ディフェンス面においてはどうするつもりだ?」
「じゃあ、一試合で30点得点か、リバウンド12本、状況をよく見たプレイを先生判断で5回、ディフェンスは一度も抜かれないとか?」
「一度も、か?」
「…ええ、一度抜かれてオッケーなんてディフェンスじゃダメでしょー。」

そういえば先生はそうか、と黙りこくった。
それから、プラスで、条件を付けたり減らしたりして一応、まとめる。
スコア表の裏に条件を書き出して先生に渡した。

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