旦那 | ナノ



006
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「今日から一緒にご飯食べようか。」
「え?!」
「あ、彼女いる?それならやめた方がいいと思うけど。」

驚きの様子にそう返せば、彼は左右に首を振っていないけど、と言う。
でも、なんで?と聞きたがっていることがよくわかるその表情にふふと笑って、口にした。

「だって、ご飯とみそ汁で毎食のうえ、レシピだけ丸投げも辛いかなと思って。」

そっちの方が良ければそうするけど…まだ春休みだし、時間はあるからそっちでも平気?
と首を傾げれば、ハッとしたようにお願い、氷雨ちゃんと両手をあわせる。
若干必死さすら感じるのは気のせいだと信じたい。

「了解、じゃあ、お夕飯は何時くらいがいい?それに合わせて買い物とかにも行かないと。」
「俺も買い物行くよー。」
「そだね、見極め方とか覚えといた方がいいよね。」

見極め…なんて言葉で目を輝かせる彰くんは中学生って感じで可愛いと思う。
ふと思いついたように手を叩いた。

「それまでバスケしようか!」

それがいいよ、と楽しそうに言う彼に、本当にバスケが好きなんだなぁ、なんて感情を抱いて。
私コートは詳しくないよ?と言えば、俺が知ってる、と笑う。
じゃあ、今から行く?と問えば目を輝かせて、準備する、と立ち上がった。

「あ、氷雨ちゃん、ボール持ってる?」
「うん、一応ね、あと運動しやすい服装に着替えてくるよ。」

肩をすくめて、残りの紅茶を飲む。
蒸しパンは申し訳ないが、食べる時間はなさそうだ。
まあ、後で捨てるなり、持ってくるなり何なりしてくれるだろう。
立ち上がって、紅茶ありがとう、美味しかったよ、と伝えて玄関に向かう。
後ろから、これ食べちゃってもいいのー?と言う声が聞こえた。
別にいいよーと返して、部屋に戻る。
着替えて眼鏡をポケットに入れる、タオルとボールを準備、ああ、スポーツドリンクも用意しとくべきだよね。
あと、一回帰ってくるかわからないからお財布を持って、携帯…はないんだ。
コンコン、とノックされて、慌てて玄関に向かう。

「行こうか。」
「うん。」

エレベーターで一階に下り、どれくらいの距離か聞く。
彰くんは一瞬考えて、徒歩30分?と首を傾げた。
徒歩30分…ならチャリで10分?と聞けば、持ってるの?と聞き返される。
その質問に頷いて、駐輪場に向かう。

「彰くん、後ろ乗る?」
「…普通逆じゃない?俺が漕ぐよ。」

押しながら聞けば、呆れた顔をして籠に彼自身の鞄を入れた。
そのままハンドルを取られる。

「それに、氷雨ちゃん場所知らないでしょ?」
「…それはほら、彰くんが前を走るか、後ろから案内してくれれば。」
「だーめ、ほら後ろに乗って。」
「…私の自転車なのに。」

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