旦那 | ナノ



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とはいえ、兄さんも面白いことをしてくれるものだ。
まさか、この時代の服装は趣味に合わないとかいって、ブランドまで立ち上げるのだから。
こちらの世界であれば、確かに資本金は多いし、失敗しても他の道があるわけで。
これがさらに成功すれば、その分彼女さんとのゴールインも近づいてくるのだから、きっと頑張ってくれるだろう。
不良、というか、ヤンキーの中でも垢抜けた存在というか、ゴツメの服も着こなせる人には人気だ。
あとホスト系?お兄系?その辺の区別は正直よくわからない。
色々混ざってる気がしないでもないけど、成功すればこっちの勝ちだ。
本当は彰くんにお願いしようかと思っていたのだが、ちょうどいいと洋平くんにお願いすることにした。
椅子に座って洋平くんを待っていれば、着替えた洋平くんが困惑した顔で出てくる。
ついでと言わんばかりにリーゼントも崩されているせいか、まるで別人だ。

「うーん…」
「どう、でしょうか?」
「氷雨さん…?」

責任者さんと洋平くんが私を見る。
どこか不安そうな声が聞こえるが、私は上から下まで彼を見つめた。

「洋平くんさぁ」
「…、」
「顔がいいから何着ても似合うよね、すごい狡いんだけど」

私の言葉に、はあああ、と深いため息が二つ。
安心したような顔に、自分の言動を振り返る。
…確かにちょっとダメな反応だったかもしれない、ごめん。
素直にごめんなさいと謝って、洋平くんに視線を戻す。

「洋平くん、不労所得って嫌い?」
「…どういうことっすか?」
「このままそれ着て帰るか、私とちょっとお写真撮ってからそれ着て帰るかの違いかな?」
「モデルになるかどうかって、いいんすか?」
「うん、別に。洋平くんが嫌なら彰くんにお願いするから大丈夫」

へら、と笑えば、洋平くんは眉を寄せた。
静かに私に近づいて、私の目をまっすぐに見つめる。
真剣な顔で、告げた。

「あのさ、氷雨さんが今デートしてんのは俺。他の男の名前を出すのはルール違反だよ」
「っ…ごめん、なさい」

思わず顔ごと視線を逸らして、申し訳ない気持ちと羞恥がごちゃ混ぜになった状況に混乱する。
待って、まずい、イケメンすぎる。
何このイケメン、怖い、これで年下とか恐ろしすぎる。
なんていうの?確かに宗くんとか、彰くんも紳先輩もイケメンだよ?
周りで言えば、リョーちゃんだって、富中エースだって、藤真さんとか花形さんだって、みんなイケメンだよ?
でもさ、なんかこう違うんだって。
そんなことを思いながらテンパっていれば、ふと手を取られる。
誘導されるように洋平くんの顔を見上げた。

「氷雨さん」
「な、なんでしょうか」
「俺のこと、人畜無害とか思ってるかもしれないけど、全然そんなことないから」
「っ?!」

目を見開いてただただその顔を見つめる。
彼のふうと吐かれる嘆息にびくり、と肩を揺らした。
そもそも出会ったときから思ってましたけど、本当危機感を覚えたほうがいいんじゃないっすか。
ため息とともに告げられた言葉に、眉を下げるしかできない。

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