旦那 | ナノ



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自信…というよりも、誇らしげな表情で告げる。
確かに、サポートするメンバーが多い分、他の学校よりは先を見ることが出来るだろう。
だが、そう言葉にしていってもらえると、嬉しい。
緩みそうな唇をきゅ、と力を入れて引き締めていると、メンバーチェンジをしたのか、紳先輩がコート脇に戻ってくる。
来年になると、紳先輩がいなくなるんだよなぁ、と思いながら、他の先輩たちを見る。
相沢さんもいなくなるし、武藤さんや高砂さんだっていなくなってしまうのだ。
…今年も後悔しないように、頑張ろう。

「今年なんですが、多分、紳先輩がかなり重要になるかと」
「…牧が、か?」
「というよりも、陵南の仙道とマッチアップすることになるだろう紳先輩、とも言えます」

私の言葉に眉を寄せた高頭先生に、自分の名前が出てきたからか、紳先輩が近づいてくる。
疲れを見せないその顔に手元に残っていたタオルを渡した。
ありがとう、といいながら受け取って汗を拭き始める紳先輩から目を逸らす。
高頭先生に視線を戻して、未だに眉を寄せているか確認。
どうやら納得する何かがあったのか、むしろ考え込んでいる。
これは邪魔しないでおこう、と紳先輩を見る。
すっかり呼吸も落ち着き切っている紳先輩は私ににやりと笑いかけた。

「できるか?」
「…勿論です」

ボールを持って、少し場所を移動する。
だむだむとドリブルをしながら紳先輩と向き合った。
にこり、笑って一度ボールを止める。
真剣な目をした紳先輩が腰を落とした。


「…ああ、500本シュート!ごめん、宗くん!」
「大丈夫だよ、今始めたばっかりだし」

にこり、笑う宗くんにごめんね、ともう一度謝って、手伝いを始める。
なんというか、やっと一息つけた、という感じだ。
部活中はいつも以上に忙しかった。
多分、男マネの仕事の一部が此方に回ってきていたからなのだとわかっているが…。
橘くんと数名が陵南と武里の情報を整理してたからね。
練習の方は相沢さんの冷静な監視の下、無理は禁止されていたけど、無理ギリギリまでは許可される。
で、部員がギリギリまでやったら、サポート側もギリギリまで動かないと行けない訳だ。
…毎日欠かさずやっている500本シュートの存在を忘れるくらいには頑張った。

「氷雨ちゃん、無理はしないでね?」
「うん、大丈夫だよ!今週はお夕飯を洋平くんが作ってくれるから」
「え…?」
「うん?」

なぁに?と首を傾げると、宗くんは眉を寄せる。
シュートが乱れて、リングがガン、と音を立てた。

「集中切れてるけど、休憩挟む?」
「誰の所為だと…大丈夫、ボールくれる?」

前半はごにょっててよく聞き取れなかったけど、とりあえず気にしない。
それにしても、洋平くんは本当にいい子すぎて…ありがたい。
落ち着いたらあとでお礼しないとな、と考えてから、宗くんにパスを出した。

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