旦那 | ナノ



004
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部屋に荷物を置いて、何か持っていけるものを探した。
…が、ない。
慌てて、冷蔵庫の中を見れば、まあ、色々作れなくはない程度の材料。
ボールや泡立て器を用意、クリームチーズと牛乳、ホットケーキミックスを使って、蒸しパンもどきを作る。
あ、チーズ大丈夫かな?ダメだったら何か後でまた作ろう。
それを持って、他に何か必要なものはあるだろうか?と首を傾げた。
うん、大丈夫だろう。
紙袋に3つ並べておいて、上を閉める。
隣の部屋の扉の前に行って、コンコン、とノック。
がちゃ、とドアが開いて、さっきまで見ていた顔が目の前に広がる。

「お邪魔します。」
「微妙に散らかってるけど、どうぞ。」

引っ越しして来てすぐなのだろう。
段ボールがいくつか残っている。
部屋自体は作りがまるで逆になっていた。

「あ、仙道さんチーズ食べられます?」
「え、うん。俺嫌いなものないから。」
「じゃあ、これ、さっき作ったので味の保障は出来ませんが。」

そう言って、まだ暖かい紙袋を渡す。
驚いたように目を見開いた高身長。

「さっき、って、部屋に入ってからってこと?」
「はい。」
「もしかして、氷雨ちゃんて、料理上手だったりする?」

あ、此方来て、とソファに案内される。
オズオズと勧められるがままに座って、私の目を見つめてくる仙道さんに首を傾げた。
どこか必死さすら感じられる様子に吃驚しながらも、眉を下げて答える。

「上手かはわかりませんが、作れなくはないです。」

人に食べさせたことはないので、何とも言えないんですが…。
なんて苦笑したら、キラキラした目で、私の前に膝をつく仙道さんの姿。
おしゃれなガラスの机の上に紙袋をおいて、床に手を着く。
その頭が下げられる前に肩を押さえた。
土下座はそんな簡単にしちゃいけないと思うんだけども!
と心の中で叫びながら、話を促す。

「料理、教えてくれませんか。」
「え?そんな程度なら全然いいけど。」

土下座しようとするから、何頼まれるのかと思ったよ、と苦笑すれば、彼が驚いたように笑う。
お弁当つくって下さいとか?と笑う彼に、いやいや、毎日6食+おやつ作って下さいとか。
言えば、彼は思わずといったように吹き出した。

「流石にそんなお願いはしないよ。」
「なら土下座はいらないよ。」

笑って、そっとつんつん頭に触れる。
ぽんぽんと叩いて、ふと気がついた。
ため口聞いちまった…初対面だし敬語で頑張ろうと思ってたのに。

「氷雨ちゃん、彰でいいよ?」
「へ?」

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