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クリスマスパーティー
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その日の部活は、全体的に浮ついた空気であった。
珍しく、出入り口には数人の女生徒が立っており、それに気がついたレイナは声をかけた。

「こんにちは、ええっと、ああ、そっちの子は高砂の幼馴染ちゃんだよね?」

それからそっちの子は相沢の彼女さんね、と次々とその身元を明らかにしていく。
氷雨は明らかになった子たちを体育館の中に案内し、ネームプレートを差し出す。
素直に胸元にネームプレートを下げて、彼女たちは用意されている椅子に向かった。
練習しながら、横目でチラチラとその様子をうかがう部員にキャプテンの激が飛ぶ。
みっともない姿を見せるんじゃない、と響く声に返事が揃った。

「今頃取り繕っても遅いとは思いますけどね、」
「…俺は氷雨ちゃんさえ居ればいいんだけどなぁ。」
「宗くんは黙って練習しててくれる?」

神の言葉に氷雨は鼻で笑うように対応して、出入り口に視線を向ける。
そこではレイナが残った数人の女生徒を追い返していた。
けばけばしく化粧が施された3年生であろう一人は特に声を荒げている。
あたしは、宗一郎の彼女だってば!
と、叫んでいる声が、氷雨と神の元へ届く。

「…らしいけど?」
「あんな人知らないんだけど…仕方ない、言ってくるよ。」

はあ、とため息を吐きながら、そちらの方向に小走りで向かう神。
若干恐怖すら感じる笑顔を浮かべて、彼は数十秒と言う短い時間で他の女生徒たちも追い払った。
氷雨は慣れているのか、と少しズレた関心をしてから、通常業務に戻る。

部活は終了の時間が近づくにつれ、浮ついた空気になっていく。
しかし、集中を切らすことなく、彼らは決まった時間までは練習に打ち込んだ。

「今日はこれで終了だ、各自、片付けと準備をするように!」

キャプテンの声が響いたと同時に、氷雨が何処かへ駆け出し、レイナは女生徒たちを案内する。
男子マネたちは唖然と見送ってから、気がついたように片付けと同時に飾り付けを始めた。
部員たちも慌ただしく部室に戻り、普段はほとんどの場合は使わないシャワー室に駆け込む。
一時間もすれば、体育館は簡易パーティー会場のようになっていた。
手作りの装飾品で飾り付けられた体育館内には、女生徒たちが持ち寄った料理と部員が持ち込んだお菓子。
それから、高頭先生からの差し入れのジュース。
氷雨の担当した何種類ものクリスマスケーキ。
女生徒たちは、レイナの作ったサンタの衣装を着ている。

「では、これより!海南バスケ部クリスマスパーティーを始めます!」

楽しそうに叫んだミニスカサンタのレイナに並び普通のサンタに扮したキャプテンがいる。
その様子をギャラリーから見下ろしている氷雨は疲れたとしゃがみ込んだ。
ふぅ、と深呼吸してから手に持ったスポーツドリンクを口に含む。
と、彼女の目の前に二人が現れた。
ぱちり、と瞬いて視線を上げる。

「ええと、どうしました?高砂さんに高砂さんの…、」
「はい!レイナ先輩からこれを渡すように言われていまして!」

にっこりと可愛らしい顔によく似合う笑顔を浮かべて、袋を差し出す一人。
その様子を見ながらも、何も口にせずただ様子を見ている高砂。
差し出された袋を受け取り、苦笑しながら立ち上がる。

「どうぞごゆっくり!」

にこり、満面の笑顔を浮かべて、氷雨は逃げるようにその場をあとにする。
それから緑と白を基調とした、サンタ亜種のような衣装に着替えるため女子更衣室に向かった。
スカート丈が短めなのが気になるのか、彼女は鏡の前でしきりにスカート辺りを見ている。
袋に入っていたタイツに足を通してから、もう一度鏡を見て、更衣室から足を踏み出した。

クリスマスパーティー

「白雲!お前すげぇな!!」
「え?あ、もしかして、もうケーキ食べたんですか?!」
「おう!ほとんど残ってねぇと思うぞ?」
「あ、貴女が氷雨ちゃん?ねえ、2月にお菓子教室開いてくれないかしら?」
「それ!私も参加したい、です!」
「え、ちょ…えっ?!」
「はっはっは、大人気だな、白雲!」
「牧さん、目が回りますッ、」
「よし、俺も牧に習って豪快に撫でてやろうじゃないか。」
「キャプテンは先輩といちゃついててください!」

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