正義 | ナノ



087
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翌日、同じように執務室に向かう。
出入り口のところで考え込んでいたのは、ミロさん。
無視するのもアレだし、と声をかけた。

「おはようございます、ミロさん」
「おはよう、氷雨ちゃん!」

…あれ?何か空耳?
氷雨ちゃんとか呼ばれた気がしないでもないんだけど。
思わずぽかんとしかけて、自分を叱咤する。
にこり、と微笑んで、目の前の彼に声をかけた。

「どうかなさいましたか?」
「え?」
「なんだか、考え込んでおられたようでしたので」

社交辞令的に、そう言えば、彼はにこりと笑った。

「どうやったら君と仲良くなれるかと思って」
「そのように心を砕いて頂けるのはありがたいのですが、そう思って頂けるのであれば、」

小さく微笑んで、それから、彼を見る。
きょとん、と首を傾げるようにしながら、瞬く様子が見えた。

「仕事、しませんか?」
「…俺が仕事してないみたいに聞こえる」
「いえ、そういうわけでは」

穏やかに見えるように微笑んで、見上げる。
キラキラと輝く金髪に、吸い込まれそうな青い瞳。
整った顔立ちは、女性に人気なのだろう。
彼自身も、多分、整っているという自覚があるようにも感じる。

「私は、自分の価値を仕事でしか表せない、詰まらない人間ですから」

私の仕事を見て頂いて、評価して頂くことが、私を理解して頂く一番の方法かと。
そう告げて、執務室の扉を開ける。
気がついたようにこちらを見る、シュラとデス。
今日はディーテはいないらしい。
少し残念だ、と思いながら、呼ばれるままに彼らの近くに座る。
シュラが私の仕事を受け取ってくれていたらしく、手渡してくれた。
ありがとう、と嬉しく思いながら受け取り、書類に集中する。
数秒かけて息を吐いて、それから、ゆっくりとした瞬き。
一度ペンを回して、書類だけをみつめる。

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