正義 | ナノ



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不満そうな、申し訳なさそうな表情がこちらを向く。
どうせ、仕事上だけの付き合いでしょうし、とは思うも、口にするのは憚られた。
その代わりににっこり笑って、首を傾げる。

「じゃぁ、今度、何かごちそうして下さい」
「そんなことでいいのか?」
「そんなことでもないと思うんですけど…」

そう答えて、キッチンに向かう。
和風パスタの完成。
…まあ、そこまでがっつり和風じゃないし、多分平気でしょ?
目の前にそれを置けば、吃驚したように見られる。

「…なん、でしょう?」
「料理、作れるのか…?!」
「え、はい、多分食べられるものだと思います、けど」

首を傾げ、彼を見る。
少し考え込んだシュラさんは、なあ、と声を上げた。
なんです?と聞けば、少し迷ったようにして、いや、なんでもない、と言われる。
そうですか、と返して、手を合わせて頂きます、と軽く頭を下げた。
一口、うん、まあまあ。
よく出来た方だと思う、うん。
ちら、と正面のシュラさんを伺えば、顔を歪めることもなく食べている。
…多分セーフ?

「お口に合わなければ、別のものも作りますから」
「問題ない」
「あ、それでお昼まで持ちますか?」
「…多分」
「じゃあ、後で間食渡します」

もぐもぐ口を動かすと、怪訝そうな表情をしたシュラさん。
何だ?何かおかしなものでも入っていたか?
首を傾げて、言葉を促す。

「何故、そこまでする?」
「日本人の心、もしくはおもてなしの心ってやつですよ」

口角をつり上げて、目を細めた。
驚いたようなシュラさんに私こそ驚いたが、表情は変えず、食事を進める。
食べ終わり、ごちそうさま、と手を合わせてシュラさんを見ると彼も丁度食べ終わる所だった。

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