正義 | ナノ



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あの親睦会というか歓迎会から3日ほど経った。
基本的にこちらからの対応も、あちらからの対応も変わってはいない、と思う。
今まで通り、ムウさんとアルは教皇宮に上がってこられる状況ではないし。
サガさんとカノンさんは大抵執務室で仕事をしているし、たまにカノンさんはどこかに出かけている。
なお、デスとシュラとディーテはいつも通りだ。
仕事が進むようになったリアはアイオロスさんと兄弟仲を戻すためか、二人で出掛けたらしい。
シャカさんとは明確に次の約束が決まったし、童虎さまはどうやらシオンさまと話があるらしく奥に篭っている。
ミロさんは相変わらず唸りながら仕事をしているし、カミュとは朝の語学学習が続けている。
私としては全員と話をしたことで多少心を許されたのか、話しかけることは増えたような気もするが…微妙な差だろう。
仕事の話とかも増えているから、普通の会話が増えたかどうか微妙なところでもある。

「氷雨、おはよう」
「おはようございます」

支度をして執務室に向かえば、いつも通りサガさんが迎えてくれる。
こちらに、と言いたげにサガさんの真隣に椅子が用意されている。
…これは来いってことかしら?と思っていたら手でポンポン、と隣の椅子を示された。
把握した。
荷物を持ったままサガさんの左隣に座る。

「相談に乗ってもらえるか?」
「あ、はい」

仕事の準備を整えてから、隣を覗き込む。
が、サガさんが左手で持ち、右手で該当箇所を指差す関係で、少々見辛い。
仕方ないので椅子をサガさんの椅子にくっつける。
横から覗き込みながら、ああでもないこうでもない、と話をする。
私も右手で指し示しながらもこれはなんですか、と聞きながらも進めていく。
扉が開く音がするたびに二人で顔を上げて、やってきた黄金聖闘士におはよう、と声をかけて、また視線を落とす。
と、そんな私に話しかけてきたのは、まさかのリアだった。

「氷雨、ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう?」

サガさんとは反対側の隣に回ってきたリアは持っていた書類をこちらに見せるが、サガさん同様に指を指しながら話すので、書類自体が少々遠い。
体をリア側へ傾け、書類へ目を向ける。
…おお、すごい、成長している。
と言うと少々馬鹿にしているような感じになってしまうが、そんなことはない。
むしろ感動寄りだ、報告書すらまともに書けていなかったのに、それをまとめて次の段階へ持っていくための作業をしているのだ。
ポテンシャルはあったと言うことなんだろう。

「ここは、この書き方で問題ないだろうか?」
「…そうですね、多分問題ないと思いますけど…サガさん、どうでしょう?」

内容が完全に業務関連なので私が対応するのは流石にちょっと。
そう思って話を降ったら、サガさんが私の奥からさらに覗き込む体勢になるので少々避ける。

「ああ、これか。これなら…そうだな、」

ちらりと見ただけで内容を理解したらしいサガさんは引き出しを開けて、迷いなく一つの書類の束を取り出した。
とん、と机の上に置かれたその書類は意外に分厚い。

「これが参考になるだろう」
「…ああ、これってわかるのか?」
「ああ。私がまとめた資料だからな」

驚いたようなリアは、その資料を受け取って、パラパラ、と流し見る。
どこかを確認しているらしいのだが、特に何も口にはしていない。
一度手元の書類を戻し、サガさんを見つめる。

「ありがとう、サガ」
「何、気にするな。それにアイオリアがここまでしてくれるのであれば、こちらとしても助かる」
「…そうか」

くすぐったそうな笑顔を浮かべた彼は資料を持って軽い足取りで席に戻っていく。
サガさんは何事もなかったかのように私に続きだが、と声をかけた。
思わず一人で笑ってしまう。

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