正義 | ナノ



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「そう考えると…聖闘士の制約が多くなってきますね」

他の国に長時間滞在できる方法が限られている、というのは非常に面倒だし、そのためにはお金がかかる。
まあ、聖域の運営については教皇やら黄金聖闘士たちがどうにかするだろう。
そこまで考えて、それぞれの書類に視線を落とす。

「なら、雛形を作って、それを送付したほうがいいですね…マニュアル的なものも作っておけば、ある程度の不慮の自体にも対応できるでしょうし」
「そうだな」

ふむ、と頷いたカノンさんは手元のメモに何かを書いている。
Todoリストでも作っているのだろうか?
さて…と、あとは聖域全体の収支を見てみて、予算とか決めてるのかも確認して。
復旧のためにどれくらいの予算が割かれてるのかを、絶対に確認しなくては。
早く磨羯宮の亀裂直して欲しい、切実に。
私が使う使わないじゃなくて、本当に危ないから、死ぬから。
なんて思いながらカノンさんと仮眠室にこもって仕事を続けた。
ああでもない、こうでもない、と言いながら雛形の元を作ってみたり、予算について話をして。


「氷雨…ここか?」

仮眠室の扉を開いたのは、シュラだった。
ぱちりと瞬いて、視線を向けるとカノンさんもそちらを見る。
苦笑交じりのシュラが、呆れを混じらせて笑う。

「もう夕方だぞ?熱中するのもいいが…休憩はしたのか?」
「えっ?!」

うそ、と言いながら懐中時計を引っ張り出して時間を確認する。
確かにもうすぐ16時になるといったところだった。
メモでまとめてあるからここで終わりにしても問題はないだろう。
カノンさんもそう思ったのだろうか、片付けを始めていた。
彼は眉を下げて、私に視線を向ける。

「昼食をしっかり摂れと言っていたのに…これではミイラ取りがミイラだな」
「仕方ないですよ、集中しちゃうとこうなるんです」

だから、次は気をつけましょうか、と笑い返して自分の荷物を持った。
ここから一時間で、自分の仕事を終わらせるとして…あー、不味い、昨日休みだったから今日やらなきゃいけないの多いんだった。
仕方ないか、“わたし”に協力してもらおう。

「シュラ、ちょっと手伝ってもらってもいい…?」
「なんだ?」
「英語の報告書なんだけど、“わたし”に読み聞かせてくれる?」
「…?わかった」

不思議そうなシュラに、ありがとう、と笑って、“私”は目と手にだけ集中する。
手元の書類が終わり、ふう、とため息をひとつ吐きながら顔を上げる。
シュラもちょうど読み終わったらしく、終わったぞ、と全部を差し出してきた。
ここからは“わたし”の仕事だ、と“私”は自分自身の休憩のため、ゆっくりと支配権を譲る。

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