正義 | ナノ



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それは、カノンさんへの罪滅ぼしでもあり、カノンさんの分まで愛され必要とされるためであり、自分自身が捨てられたり隠されたりすることへの恐怖心から、と考えれば説明できます。
ですが、途中でアイオロスさんがカノンさんとサガさんの区別をできなくなることで、カノンさんは存在をサガさん以外からは認められなくなります。
しかも、そのサガさんとは日の当たる場所では決して隣り合って立つことはできない、少年がそんな状態になったなら…しかも、あんな暗いところに閉じ込められていたら、悪に身をゆだねてなんらおかしくありません。
サガさんの中のカノンくんはカノンさんのコピーなのですから、サガさんの中でも悪に染まります。
それを受けて、サガさんはより潔癖になったのでしょう、神のような、と言われるほどに善の人格となるのは、カノンくんが悪として成り立つために、徹底的にその逆を、と。
灰色同士より白と黒の方が明暗がはっきりするのと同じことですね。
そして、決定的なのは教皇にアイオロスさんが選ばれたこと。
必要とされるべく作り上げた自分自身が、いらない、必要ないのだと否定された。
その絶望に、邪悪は取り付いたのです。
サガさんはそれでも、善の面として行動し続けていたこともあり、それはサガさん自身に近づいていて、邪悪はカノンくんの方に全部吸収されたと推測できます。
一気にその力が増えれば、元々の人格、カノンさんのコピーとしての意義は消え、ただ邪悪をなすだけに。
そして聖戦で邪悪は消化され、元々のカノンくんの人格だけがサガさんの中に残りました。
それまでは表に出てきていなかったことを考えれば、元々カノンくんは表に出てくる存在ではないのです。
カノンさんの見つけて欲しいという意思をサガさんが敏感に感じ取っていたから、とも言えます。
ですが、サガさんはカノンさんの兄、実の弟が今もまだ幼い日のことで苦しんでいるのを感じていたのでしょう。
そこに私…青銅聖闘士を徹底的に甘やかしている私がいた、それを見たサガさんがきっとどこかで私なら、と考えた故に、カノンくんが私の元へ現れた、と繋がります。
私がカノンくん、ひいてはサガさんに時折子供っぽさを感じていたのは、カノンくんの成長が止まっているからであり、止まる理由はカノンさんと離れていた時期が長いから、かと。
それから、サガさんの心理の中には愛されたい、必要とされたい、という願いが未だに根強く残っており、愛されるには子供らしさが必要だと断じているからかもしれません。

「どうかな、カノンくん?」

問いかければ、ゆらり、サガさんの髪が黒く染まる。
充血気味の目元を撫でて、くすり、と笑った。

「泣きすぎたら、目が真っ赤を通り過ぎて、溶けちゃいますよ」
「… 氷雨」
「はい」
「 氷雨、 氷雨」
「なんですか、カノンくん」
「見つけて、くれた」

やっと、と笑ったその顔は、先日見たカノンさんのへにゃりとした笑い顔にそっくりで。
座っていた椅子から立ち上がって、勢いよく抱きついてきた。

「 氷雨、ありがとう」
「どういたしまして…それで、カノンくんはどうするんですか?」
「徐々に混じるとは思うが、まだ暫く消えることはないだろう」

ちらり、軽く動いた先にはカノンさん。
ああ、カノンさんが認められて、幸せになるまでサガさんの中のカノンくんは消えない、と。
まあ、反発し合うだけじゃなくなるだろうし、徐々に混じるってことは、私の精神状態に近くなるのだろう。
くっきりきっぱり別れて、嫌っているより全然いい。

「そう…なら安心ですね」

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※かなり好みの分かれる捏造が入っていますので、ご注意ください
 もし、あわないと思った場合、読むのをやめることを推奨いたします
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