正義 | ナノ



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そうだね、最近はあんまりないけど、星矢君たちが聖戦でいなかった後とか、よく号泣するよね。
知ってる。
でもさ、ここ聖域なわけじゃん?
いつもの5人組だけじゃないじゃん?
むりむり、羞恥が止まらない。
思っていれば、焦れたような一輝君の声が響く。

「氷雨!どうせ自分の体調不良も気がついていないんだろう?いいから出てこい」
「それは流石に、書類の処理速度で、」
「ほう…?気がついていたのか?」

一気に低くなったその声に、マズったと冷や汗が流れる。
ドアの向こうで、瞬君が指示を飛ばしている。
あ、これ、多分逃げられないやつだ。

「開けないなら、無理やりにでも開けてもらうぞ?」
「やだ!」
「わがまま言うな」
「わがままじゃないもん、意思表示だもん!」
「氷雨さん、あなたの作ったご飯が食べたくて来たんですが…ダメですか?」

丁寧語な紫龍君。
ぐ…と思わず扉を抑える力が緩んだ。
瞬間、ぐい、と引かれる感覚。
体がごろん、と転がり出て、紫龍君に抱きとめられた。

「おかえりなさい、氷雨さん」
「うぇ…」

見上げれば困ったように、しかし、柔らかく微笑む紫龍君。
つい、止まったはずの涙がまた出てきて、誤魔化すために抱きついた。

「部屋に行きますよ?」

首筋に頭を押し付けたまま、こくりと頷く。
そのままの体勢で簡単に抱き上げられて、運ばれる。
器用だなぁ、と感じながら、彼らがどんな顔をしているのか見るのが怖くて、腕に力を込めた。

「氷雨さんは相変わらず、力が弱いですね」
「紫龍君のばか」
「そうですね、俺たちはみんな氷雨さん馬鹿だとお嬢さんが」
「おい、紫龍早くしろよー!お前と一輝は書類担当だろ!」

星矢君の声。
執務室を出て、自分に与えられた部屋へ連れて行かれた。
そこで待っていたのは、星矢君、氷河君と瞬君。
用意されている着替えとともにシャワー室へ追いやられて、素直に着替える。
ベッドに座らされて、どうせ食べていないんでしょう?の言葉とともに鍋焼きうどんが出てくる。
部屋の様相は全く違うのに、まるで、ここが城戸邸の一室のようで。

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