正義 | ナノ



130
しおりを挟む


なんというか、誰も彼もが気を使ってくれている感じで。
数人例外もいるが、そんな彼らこそ普通なのだと思う。
でも、気を使われすぎると、逆に疲れてしまう。
今まで殆ど人と関わらないで仕事をしていたし…。
関わったとしても決まった数人だけだったから、その反動でもあるのだろう。

「原因はお前だろ」
「デスの所為で遅れた仕事が私のところに余裕がない状態で来てるのは?」
「…デスマスク」

シュラの低い声と、ディーテの素晴らしい笑顔。
デスの恨むような視線が私に向けられるが、スープを口にしながら誤摩化した。
私は事実しか言っていない。
とは言え、実際体調不良はどうにかしないといけないだろう。
いつも使ってる薬がそろそろ終わりそうだし…。
あの薬無しで、いつもの仕事をしようとなるとなかなか辛い。
他に頼まれた仕事もある訳で、そうすると他の時間を削りながらするしかない。
で、削れる時間と言ったら、睡眠時間くらいな訳で。

「ごちそうさまでした」
「…いつもより少なくないか?」

シュラの言葉に首を傾げる。
自分の手元にある皿を見るが、いつも通り綺麗だ。
だが、何故かシュラは確信しているようで。

「そんなことないと思いますけど…」
「こまけーことはいいだろ?」

肩をすくめて、めんどくさそうに言うデスに、こくりと同意する意味で頷いておく。
実際、ミロさんに言った通り、仕事をすることでしか、自分の価値を表すことが出来ないのだ。
聖域にいる以上は、結果を出さなくてはならないだろう。
アイオロスさんにも大口叩いたし、仕事が出来る人間でなくてはいけない。
と、ディーテが突然立ち上がり扉を開ける。

「お姉ちゃん!新聞持ってきたよー!」

そこにいた貴鬼くんが眩しいほどの笑顔で新聞を見せてくれた。
ゆっくり立ち上がって、その新聞を受け取る。

「ありがとうね、貴鬼くん」
「へへ、どういたしまして!」
「読み終わったら、どうすればいいかな?」
「明日の新聞持ってきたとき、またおいらに渡してくれればいいよ」

にこにこ、笑う貴鬼くんの頭をそっと撫でる。
嬉しそうにニコニコする彼が可愛くて、思わず私まで微笑んでしまう。
非常に癒される。

「ねえ、ぎゅーってしていい?」
「え?お、おいらをかい?」

慌てたような言葉にこくりと頷く。
仕方ないなぁ、と照れくさそうに告げる彼に嬉しくなって、大きくなった彼に抱きついた。
はー…癒される…ストレスが減っていく感じがする。
十秒ぐらい抱きついてから、頭を撫でて離れた。

「ありがとう、貴鬼くん」
「別に!じゃ、じゃあ、おいら、ムウ様の所に戻るから!」
「うん、また明日ね?」

ばいばい、と手を振って、新聞を持ちながら、振り返る。
微笑ましいのか、不審なのか、混ざりあった複雑な表情が三つ並んでいた。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]
[ 番外編に戻る ][ 携帯用一覧へ ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -