正義 | ナノ



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私気がついたんだよ。
此方の人って多分、下の名前で呼ぶことが普通っぽいってことに。
名字呼びってあんまり普通じゃないみたいなんだよね?多分。
なんて思いながら、リアさんに意識を戻す。
と、視線を彷徨わせている彼がキッと此方を見た。

「氷雨っ」
「は、はい?!」

いきなり叫ばれるように名前を呼ばれて驚く。
姿勢をよくして、返事をした。

「あ、いや…その…君は俺よりも年上だろう?だから、」
「えっと…リアとお呼びした方が?」
「ああ!」

嬉しそうな顔で頷いたリアに、笑ってこくりと頷く。
瞬間、女性に年齢の話をするのは、タブーだとは分かっていたんだが、と眉を下げたリアに首を左右に振る。

「確かに一般的にはあまり褒められたことではありませんが、私は構いませんよ」
「そう、なのか?」
「ええ、年を重ねれば重ねるだけ、人としての深みも増やせるでしょう?」

そう答えて、止まっていた足を動かし始めた。
のだが、疲れる。
やっぱ寝不足で疲れがとれていないのだろう。
ふぅ、と深呼吸して、一段ずつゆっくり登る。

「氷雨、」
「なんですか?」
「あ…っと、その、だな、」
「はい。」
「お、俺が!連れて行こう、か?」

登るのが大変そうだから、と慌てたように付け足した彼はかわいらしい。
いやうん、あまりそういうのは言ってはいけないのは分かるんだけどね?
口にしてないからいいよね、と一人完結させて、考えた。
今日はいつもより疲れている。
さらに、リアは普段運んでくれるディーテより、確実にしっかりした体型をしている。
しかもこの慌てよう、なんら間違いが起こることはないだろう。

「お願いしてもいいですか?」
「ああ!任せてくれ!」

そう言った彼は一瞬戸惑うようにしてから、ふわりと私を抱き上げた。
…何故だろうか、すごく気恥ずかしい。
いや、ディーテもデスもシュラも皆横抱きで運んでくれるんだよ?
俵担ぎより持ちやすいし、けが人とか運ぶときは基本おんぶか横抱きだろうし、横抱きの方が背負う時間なくてすむし。

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