正義 | ナノ



003
しおりを挟む


とにかく仕事量は半端ないってことです。
仕方ないよね、どんなときもパソコン手放せない状態になっていても…。
日本語の書類は量が多いし、海外からの仕事が期限に遅れてくるし、個人的に筆記体は読みにくくて仕方ないです。
ただ、要領がいいのか、神様からのプレゼントか知らないですが、私、事務処理すごく早いんです。
これが所謂トリップ特典ってやつなんでしょうか?
知らないけど、すぐ色々と頭に浮かんでくるのです。
例えば、必要事項、重要な部分、正しい敬語、文章作成方法、正しい言語、汚い字でも読める…etc。
まぁ、チートって言えばチートですけど、事務処理じゃなきゃ役立たない特典だと真剣に思います。

今日も今日とて終わらせた書類を持って、沙織様のお部屋に向かった。
コンコン、とノックをして中からどうぞ、と言う声が聞こえるのを待つ。
声を聞いて一拍後、扉を開いて、高そうな椅子に座りながら、学校の宿題をしている彼女に近づく。
可愛いなぁ、と思いながら、書類を手渡すと、思い出したように沙織様が顔を上げた。

「氷雨さん」
「はい、何でしょうか?」
「パスポートは持っていますか?」

パスポート…持ってたっけ…?
海外に行ったのは、大学のときだから。

「はい、持っています」
「では、明後日からギリシャに出張お願いしますね。私も初日は一緒に行きますから」
「明後日、ですか」
「はい、明後日です。明日は一日お休みにしますので、必要なものは買いそろえておいてください。これが資料です」
「……わ、かりました。承ります」
「では、今日はあがってください」

ばさりと、5枚ほどのA4の紙を渡され、彼女はにこりと綺麗に笑った。
その笑顔に、苦笑。
一礼して、部屋を退出する。
その後、

「はぁ…素敵ですわ、お姉様」

なあんて、沙織様が溜息を零していたなんて知るはずもない。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]
[ 番外編に戻る ][ 携帯用一覧へ ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -