正義 | ナノ



094
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差し出されたディーテの手をとって立ち上がり、自分の書類を纏め始める。
水筒はどうしようか迷った末に、サガさんに渡した。
ミロさんの担当分の書類も纏めて、ディーテとデスの書類の中から私ができそうなものを上から数枚、掠め取る。

「では、今日は天蝎宮にいますので、何かあったら天蝎宮までお願いします」

ぺこりと頭を下げて、執務室を出て、自室へ向かう。
看病に必要そうなものを纏めていると、ディーテが扉をノックしてきた。

「どうかしたの?」
「カミュも倒れてるらしいけど、どうする?」
「…宝瓶宮に変更で。多分客間ってありますよね?」

私の問いに多分ね、と笑った彼は荷物はそれでいいの?と首を傾げる。
二人分と考えると少ないかな、と色々増やして、これで大丈夫です。とその荷物を持ってもらった。
それから、一度執務室に顔を出して、宝瓶宮に変更になりました、と告げてディーテに頼み、宝瓶宮に送ってもらう。
相変わらず、風を切る感覚にはなれないが、一番早い上、一番安全な移動方法である。

「ほら、着いたよ」

強い風に目を瞑っていれば、苦笑したようにディーテが笑う。
…宝瓶宮が信じられないほど寒い。
降ろしてもらって、思わず腕をさすりながら、デスの姿を探す。

「此方だ」
「ああ、その部屋?」

1つの扉が開いて、ひらひらと手が振られ、声が聞こえる。
近づけば近づくほど寒いのだが、ディーテやデスはけろっとしている。
感覚鈍ってんじゃないの、なんて心の中で愚痴だか悪口だか、わからないことを呟いて、部屋を覗く。
右のベッドにミロさんが、左のベッドにカミュさんが寝ていた。
正直、一部屋に纏めると、ミロさんが死にそうな気がするんだが…一部屋の方が面倒は見やすい。
ミロさんに布団多めにかけとけばいいかな?

「デス、ディーテ、ありがとうございました。此処からは私1人で大丈夫です」

笑いかければ、何ともいえない表情をしてから、わかった、と苦笑する二人。
風邪じゃないとは思いますが、一応、手洗いうがいしておいてくださいね、と声をかけて、二人を見送る。
持ってきた荷物から冷えピタを探して、二人のオデコに張った。


仕事をしながら二人の様子を見ていて、お昼頃になっていることに気がついた。
おかゆ作ろう、と寝ているカミュさんにキッチン借りますね、と申し訳程度に声をかけて、キッチンに向かう。
サイズが黄金聖闘士(成人男性)に合わせられているためか、シンクの位置が高くて作り難かった。
が、とりあえず、卵粥を作って、置いておく。
二人の寝ている部屋に向かうとやはり肌寒い。
これって、絶対カミュさんの所為だよね。
なんて、考えてから、二人の様子を見る…って、飲み物ないし。
慌ててミネラルウォーターを持ってキッチンに戻り、砂糖と塩、それからレモン果汁を入れて即席の飲み物を作る。
コップとペットボトルを持って部屋に戻れば、私がばたばたしたせいか、二人がぼんやりと起き上がっていた。

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