両想い 1/2
まぶたを持ち上げると、子元様の顔があった。
「子元様…?」
「っ、氷雨!目が覚めたか」
安堵したように見えるその顔。
美しい光を灯す瞳には不安が宿っている。
光を受ける睫毛には、涙なのだろうか、水滴が見えた。
薄い唇は血の気が引いているようで怪我でもされたのだろうか、と心が痛む。
「どこか、お怪我でもされたのですか…?」
「何を、」
目を見開いた彼は、美しい。
だが、その美しさはいつもと違い、儚く消えゆくもののそれにも見える。
強く輝いて欲しいのだ、そう思って手を伸ばした。
「微笑んでください。子元様の笑みはとても心地いいのです」
小さく笑えば、子元様は一度目を伏せる。
それから、私をまっすぐに見つめた。
「お前は先ほど、どこかを怪我したのか、と聞いたな?」
「はい」
真面目な話なら体を起こさねば、と思ったのだが、大きな手で動きを止められる。
その手はそのまま私の頬を滑った。
「私の天命は、氷雨と共にあるのだ。お前を失えば、我が天命も尽きる」
「っ、」
「だから、私にもお前を守らせてくれないか」
「しかし、」
「許昌で思わず飛び出したのは、氷雨をどうしても失いたくなかったからだ」
畳み掛けられる言葉に逃げ道が塞がれていくのを感じる。
いや、自分自身が逃げたくないと、捕まってしまいたいと思っているのかもしれない。
まっすぐに私に告げる言葉は、すべてに火傷してしまいそうなほどの熱を孕んでいる。