鬼神 | ナノ



たおれる 1/2


俺たちは無事…と言い切っていいのかはわからないが、洛陽へと帰ってきた。
父上と母上が迎えてくれた家に全員で到着する。
許昌であんなことがあったのだ、兄上を守るためにも万全を敷いた方がいい、というのは氷雨の言葉だ。
その言葉に従い、この場には本当に全員がいる。
兄上に俺、元姫と賈充と氷雨はまあいいとして、夏侯覇にその護衛である鈴蘭、諸葛誕に文鴦までいるのだ。
大勢で帰ってきた俺たちに母上たちは少し驚いたようにしていたが、それでもお帰りなさいとよく帰ったと迎えてくれた。
そんな中、ふと氷雨が小さな声で文鴦に話しかける。

「もう…危険は、去った…な?」
「ああ、此処まで来て襲われることはないだろう」

答えた文鴦に、氷雨は笑った。
そして、次の瞬間、

「ああ…そう、か」
「氷雨っ!?」

その体が、ぐにゃり、とくずおれる。
スルリとその手の内から滑り落ちる迅雷剣。
隣にいた文鴦が慌てたように彼女の体を抱きとめた。
俺の声で視線が集まったのか、全員が動きを止める。
中でも一番冷静でありながら慌てていたのは兄上で、すぐに文鴦の元まで行き、氷雨の頬に触れた。

「父上!医者を!」
「う、うむ…わかった」

父上は兄上の勢いに押されるように頷く。
そしてすぐに手配を始める。
兄上は氷雨を抱き上げて、その部屋へ向かう。
俺たちは解散するにもできず、一室にまとまることになった。
氷雨に付きっきりになっている兄上は俺たちの前に姿を現さないし、父上も母上も何も言わない。
だが、あそこまで俺たちに…兄上にさえ気がつかせなかったのだから、きっとそれほど酷くはないのだと、そう信じるしかなかった。
腕のいい医者であり、同時に俺たちの家と親しいその医者が俺たちの前に現れる。

「命に別状はありませんぞ…しかし、あの毒にあれ程までに耐えるとは、見上げた精神力じゃのぅ」

ほっほ、と笑った医者に全員がホッと息をついた。
ふと、鈴蘭が気になったのか問いかける。

「あれ程まで…とはどういうことでしょうか?」
「そうじゃのぅ。彼女が毒を受けたのが、許昌で司馬師殿をかばった時じゃと言っておった」

あの毒は少量では命に関わることはないが、目のかすみや発熱、頭痛を引き起こすものとして有名じゃ。
説明された内容に愕然とした。

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