鬼神 | ナノ



きょしょ 1/2


洛陽へ帰る途中に、襲撃を受けた。
しかも悪いことに他の皆と分断されてしまって。
ここにいるのは子元様と私と、それから子元様の親衛隊だ。
兎にも角にも、彼を守らねばならない。
美しい我が主を、命を賭しても守るのだ。
方天画戟を構え、飛んでくる矢を叩き落とす。
だが、私から子元様を挟んで反対側にいる兵士が体勢を崩したのだろう。
その隙を狙って打ち込まれた二本の矢。
音に気がつくのが遅かったせいで、落とすことができない。
仕方ない、とその矢が狙う子元様の目元に手を伸ばす。
左手にその内一つの矢が刺さり、庇った背に他の矢が数本射られた。
声を出さずに唇を噛む。
もう一本は子元様の頬を擦り、私の頬も抉っていった。
幸運なことに、連続で打った所為か次の矢を番えるまでに幾許かの隙がある。
二種類の馬笛で二頭の馬を呼び、子元様と私がその馬に乗った。
馬の上で左手に刺さった矢を抜いて、青い布を細く切り、包帯のようにきつく巻いておく。
その時の痛みに顔を顰めるが、子元様に気取られてはならない。
子元様の乗った私の馬は、私の乗った子元様の馬を離れることなく追ってくる。
敵のいない場所を探しながら、首元で縛ってある髪を掴んで、髪紐の上を切った。
その髪を掴んだまま、庭園へと逃げ込む。
背の高い草の中にその切り落とした髪を投げ捨てて、子元様に駆け寄る。

「失礼いたします」
「っ、」

子元様の頬の傷口に舌を這わせる。
…こちらは、毒が入っていないようだ。
だが、もしものこともある。
軽く周辺の血液を吸い出して、青い布をその頬へと当てた。

「毒はないようですね…よかった」

ホッと息を吐いてすぐに上半身の鎧を脱いだ。

「子元様、こちらを着て、方天画戟を持って、隠れていてください」
「氷雨、」
「それから、子元様のヒョウと上着を私に」
「…わかった」

眉を寄せて、それでも頷いてくれた子元様を手伝い、すぐに脱いでもらう。
冠を預けていただいて、それも、身につける。
死角となりやすい場所を幸運にも発見することができ、そこに身を潜めてもらう。
迅雷剣を構え、やっと現れた敵兵たちを迎え撃つ。
私の馬には、子上様たちを探すよう告げて放ったため、この場にはいない。

「覚悟しろ、司馬師!」
「貴様らに我が天命は渡さぬ!」

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