うつくしいひと 1/2
文鴦と文欽を最後に残し、文鴦が父である文欽を見限る原因を作る。
それから、反乱を鎮圧させた。
文欽には逃げられたが、カ丘倹は捕らえた。
彼を眼前にして、子元様は告げる。
「昭、この者らをどうする?」
子上様が答えようとするが、それを遮るように、処断あるのみ、と賈充殿が答えた。
ですね?と後押しするような言葉に、子上様ははあ、とため息をつく。
肩をすくめた彼の前に、文鴦が膝をついた。
彼の言葉に耳を傾けた子上様はその顔を見て、告げる。
「でも、お前はそれが自分でわかったんだろ?…なら、お前は俺にとっては兎だ」
生きて、俺たちの力になってくれ、そう子上様は笑った。
その言葉に小さく笑ってみれば、恨みがましさをまとった目でこちらを見てくる。
「俺にはまだ狸と兎の区別はできねーっての」
「ふふ…なれば、嫗にならぬよう青鬼を頼ったらいいではありませんか」
「えー…俺の青鬼結構過激だぜ?村人に甚大な被害が、」
その言葉に顔をそらす。
堪えきれない笑いがこぼれた。
「っふ、そ、そうですけど、赤鬼が嫗になりかねないくらいお人よしですから…それで均衡が保たれているのですよ、きっと」
「ちぇっ、氷雨はいつだって俺の味方だと思ってたのになぁ」
「青鬼だって、いつだって赤鬼の味方ですよ」
くすくす、笑いながら子上様と会話する。
膝をついたままの文鴦が、パチリと瞬いてこちらを見ていた。
いや、文鴦だけではない。
賈充殿も、元姫も、子元様までもが、ただただ不思議そうに見ていた。
「子上殿が、嫗で、青鬼が…?」
「ああ、それは、」
「話すなよな、これは氷雨の弟の特権だろ?」
「…そうですね」
元姫の疑問に答えようとすれば、それを止められる。
子上様の言葉に頷いて、唇の前に人差し指を持ってくる。
「内緒、です」
「随分と…違うのだな」