鬼神 | ナノ



ぶんおう 1/2


カン丘倹と文欽による乱。
それは想像以上に大きなものであったが、その分反乱を起こしうる可能性を持つものが纏まったとも取れる。
…ただ、一つ気にかかることといえば、文欽の息子の存在だろうか。
文鴦、という名の将は味方兵士たちまでもが噂するほどに強いらしい。
共に子元様を守ってくれるのならば、きっと心強いだろうに、と思うと口惜しくさえ思える。
だが、それほどの士を相手にいつも通りで平気とも限らない。
もう一つの武器は方天画戟として、いつも通り迅雷剣を手にする。
戦場では、子元様を守ることを第一に考え、それでも、できれば文鴦とも、刃を交えられれば、と思う。
そんなことを思いながら立った戦場。
天は私に味方した。

「氷雨、止めてこい」
「御意に!」

子元様の命に従って、本陣に奇襲をかけてきた文鴦に向かって、方天画戟を振るう。
がちり、と受け止められたそれに、身体中が歓喜する。
ああ、ああ!
私を見て目を見開いた文鴦に楽しくてたまらない顔を向けた。

「ふ、ふはははっ、貴様が敵なのが口惜しいな…いや、むしろ好都合か?」
「あなたは、」
「鬼神・柳氷雨だ、お相手願おう」
「…文欽が子・文鴦、その挑戦、受けよう」

その言葉にぞくり、と背中に快感ともいえる歓喜が走る。
武器を合わせれば、その力量は十分すぎるほどにわかる。
これは、私の対だ。
いわば司馬懿様にとっての、諸葛亮のような。
投げられる槍を方天画戟を振るって弾く。
上段から斬りかかれば、ガードと同時に弾かれ、距離を置いた。
飛び上がった文鴦の切っ先を、ぐるりと回り勢いをつけた方天画戟で横から叩く。
空中でバランスを崩しながらも、擲槍を投げ、私を牽制する文鴦。
一歩後ろに飛んで、着地と同時に地を蹴る。
それは、文鴦も同じだったらしく、がきり、と鍔迫り合いの状態になった。
このままでは背の高い文鴦が有利となる。
力の入れ方を変え、相手のバランスを崩させて、一度距離を取り、斬りかかる。
避けられ、突きが来る。
体をひねり、それを避ければ、その突きを横に薙いで追撃された。
方天画戟を背中側に回し、ガードと同時に地を蹴り、方天画戟と躑槍の接したその場を支点にぐるり、とバク宙のような動きをする。
地に足をつけて、すぐに方天画戟を回しながらたちあがり、構え直す。
後ずさった文鴦の表情を見れば、その顔は小さく笑っている。
その瞳は好戦的に輝いており、私も笑みが抑えきれない。

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