かくにん 1/2
それが終わった後、妹は血を吐いた。
だが、それは内臓が傷ついたからであり、時とともに治るものだ。
長く伸ばされた髪を掴み、一閃。
はらはらと散るその髪を無感動に見て、妹に告げる。
「我が妹は死んだ。私が殺した」
「っ、」
「“お前”は、守るべき存在のために全てを費やせ」
目を見開いた妹…彼女の頭を撫でたくなるが、その手をぐ、と握りしめた。
わざと冷たい表情を作り上げ、見下ろす。
「貴様は弱い」
ふ、と口元を緩め、目を細める。
「だが、最後まで武器を手放さない覚悟は認める…せめてもの餞としてそれは持っていけ」
「…っはい!」
その返事に、満足感を覚える。
ホッとして、方天画戟を所定の場所に置く。
その瞬間、憑き物が落ちたかのようにホッと息をつける。
方天画戟を持つと、鬼神が本当に乗り移っているかのような、好戦的な気分になるからいけない。
他にも口調が荒くなったり、破壊衝動が増したりすることもあるのだが、それは置いておく。
容赦しない、と決めた時はこれが一番いいのだ。
振り返り、妹を見て小さく呟く。
「…やりすぎたな。方天画戟はこれが嫌なんだ」
「え?」
「方天画戟を持つと加減したつもりでも、人が死ぬからな…まあ、訓練した甲斐があったというものだ」
「訓練、」
「主に手加減だ。私が通常の将であったのなら、間違いなく得物としていたくらいに、手に馴染む」