正義・番外編 | ナノ



一輝の誕生日
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一輝の誕生日

一輝君、一輝君、今日はお暇ですか。
突然目の前に現れた氷雨はそう言って、笑う。
暇だ、と返せば、それはよかった、と嬉しそうに俺の手を取る。

「何かあったのか?」
「あったと言えばあったかな?」

軽く首を傾げて、手を引いた。
いいから行こうよ、という彼女は一体どこに行くのかも言わない。
はあ、とため息を吐いて、足を進めた。


ついたのは、彼女がよく行く喫茶店。
さ、入って入ってと促され、扉を開く。
ぱん、と破裂音とともに色とりどりのテープやらなんやらが飛んできた。
何事だ。
後ろから、肩を押される。
そのままに足を踏み入れれば、どうやらクラッカーを鳴らしたのは見知った奴らで。

「誕生日おめでとう、兄さん!」

瞬が最初に声をかけてくる。
数回瞬いて、ああ、そういえばそうか、と小さく笑った。
後ろから彼女が、おめでとう、と嬉しそうに告げる。
それから、椅子に座らされた。

「一輝君はきっとろうそくの火を消すのを厭がると思ったので、既に切れてるケーキにしてみました」

わざとらしく敬語を使って、面白そうに目を細める氷雨。
そうか、とだけ軽く返事をして、楽しそうに俺を見てくるメンバーにため息を吐いた。

「一輝君、一輝君、プレゼント!」

子供のように目を輝かせる彼女から、小さな箱を受け取る。
その箱を見つめてから、ちら、視線を動かせば、促すようにニコニコと笑った。
もう一度その箱を見てから、包装紙に手をかける。
ひっくり返して、止まっているテープに爪を立てた。
丁寧に包装紙を剥がすと、黒い箱、ふたを開ければ、ドックタグが入っている。

「一輝君に似合いそうな装飾品を捜したんだけど…十字架は変だし、髑髏も違うし、結果、これになっちゃった」

少し情けないような笑顔で呟く彼女に、小さく笑い、感謝する、と告げた。
いえいえーと嬉しそうに笑う氷雨を見ていると、星矢たちが声を上げる。

「じゃーな、一輝!俺たちからのプレゼントは『二人っきりのひととき』だ」
「精々今日ぐらいだ、楽しんでおけ」
「ちなみに、時間制限は18時までだからね!」
「では、氷雨さん、お気をつけて」

紫龍の言葉を最後に、アイツらは外に出て行った。
キョトンとした彼女が首を傾げるが、俺の言葉で素直に椅子に座る。

「いいの?」
「ああ、アイツら、俺の顔目掛けてクラッカー鳴らしたからな」

逃げたんだ、と肩をすくめて言えば、人に向けちゃだめって言っておいたのに!と眉を寄せるその顔。
そんな様子に頬を緩めて、ほら、とケーキを乗せたフォークを差し出す。
条件反射のようにぱくり、と食いついて、嬉しそうに微笑んだ。
アイツらのプレゼントも悪くない。
小さく声を出して笑い、氷雨に二口目のケーキを差し出した。
 
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