正義・番外編 | ナノ



優しい時間
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優しい時間

その日、サガは珍しく、寝坊した。
普段から厳しすぎる程に自分を律する彼にとって、寝坊などあってはならないことだった。
慌てた様に準備をし、執務室に飛び込みかねない勢いで扉を開ける。
古い扉はそれだけで壊れそうな音を立てたが、それを気にするものは誰もいなかった。

「おはようございます、サガさん」

にこり、綺麗に笑う氷雨は席について仕事をしていた。
他のメンバーはどうやらきていないらしく、サガは一度息を吐く。
それから、すまない、と頭を下げる。
彼女は大丈夫ですよ、と優しく微笑んで、仕事しましょう?と首を傾げた。
その言葉に同意し、自らの席に向かったサガは驚きに目を見張る。
自分のやるべき書類の半数が既に終えられていたのだ。
訝しげにその書類を見て、唯一理由を知っていそうな人物に声をかける。

「氷雨、聞きたいのだが…」
「さっき、カミュさんがもってきたんですよ」

質問の内容を聞かずに、答えを与える氷雨は悪戯にに微笑んだ。

「カミュ、が…?」

予想していなかった人物なのだろう。
怪しむような声の響きで、聞き返したサガ。
それに対し、ええ、と笑う彼女。

「正確にはカミュさん"も”かも知れませんが」
「他にも、いたのか?」
「ええ、黄金聖闘士全員ですね」

ぽかん、と口を開いた美丈夫に、思わず、といった様に彼女は笑う。
彼はあまりに背負い込みすぎている、と彼女は思った。
また、それは彼女だけの気持ちではなく、書類を処理した全員の想いでもある。

「ちなみに、私の仕事も減ってました」
「何?」

驚いたような、それでいて何か知っているような表情で彼は瞬く。
その表情を見て、氷雨は納得した様に頷いた。

「さ、とにかく仕事終わらせちゃいましょう?」
「…ああ、そうだな」

理由を考え込んでいる様子のサガに苦笑して、氷雨は仕事を促す。
流される様に頷いた彼も気を取り直したのか、すぐに書類に目を向けた。

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