ふとした拍子の、
ふとした拍子の、
はぁ…どうしようかなぁ?
ぼんやりと窓の外を見ながら、ため息を吐く。
ついた頬杖は、いい加減自分の頭の重さで痺れてきても可笑しくないと思う。
ちら、と横目だけで、こちらをじっと見てくる成人男性を見た。
…先ほどと全く変わらない。
それどころか、目の輝きが増しているような気がする。
思わず目を逸らして、もう一度、晴れた空を見る。
「頼む、って」
「だからって、何で私なんですか」
「だって、お前ならアイツらも不満は言わねえだろ」
「私が言います。何で、私がやらなきゃいけないんですか」
手元の、既に処理した書類をペラペラと捲った。
何かミスがあれば、と思ってみるが、ミスが許されない環境での仕事を続けていた私の書類にミスなんてほとんどない。
今回もしかり、ミスはなかった。
床に膝をついて正座の形をとっている男はなおも続けた。
「ほら、こうやって、誠意を見せてるんだぜ?」
「なら、仕事して下さい」
「やってくれれば仕事もするって!」
「そんな口約束信じられるとでも?」
ハッと鼻で笑えば、ばつが悪そうに目を逸らす男。
頼むよ、ともう一度手をあわせる黄金聖闘士に頬杖を辞めて、その顔を見る。
多分真剣なんだろうとは思うが…。
はぁ、とため息を吐いて、にっこり笑った。
嬉しそうな表情をした男に、そのまま言う。
「絶対嫌だ」
「ちょ、おま、口調」
「おっと、いけない。思わず本音が出てしまいました」
ニコニコと笑って、腕を組んだ。
そのまま足も組み、首を傾げ、見つめる。
伏し目がちな男は床にあぐらをかいた。
「他の人も行くのでしょう?なら良いじゃないですか」
「そういう訳にもいかねーんだって!」
「何でですか」
「そりゃ、アイツらは女神が相手を選んで…」
「つまり、相手に手を出しそうな貴方はさおちゃんからも匙を投げられたと」